「ありえない・・・っ!」
「お前、いきなり何言い出してるんだよ?
いきなりアフロディーテの頬なんか触って。いちゃつくなら余所でやれよ。バカップル」

アフロディーテの両頬を包みこむ様に両手で触れている
それに対して皮肉混じりにデスマスクが口を挟み終えると
同時に金属製の椅子が勢いよくデスマスクの顔にめり込んだ。
その一部始終を紅茶を飲みながら傍観していたシュラは言わなければいいものを、と心の中で呟く。

、今のは流石にデスマスクでもダメージが大きいと思うよ?」
「大丈夫。死にはしないわ。それよりも・・・」






麗しの君とて狼







「それよりもなんで女の私よりこんなに肌が綺麗なのっ!?」

自分の肌とアフロディーテの肌を触り比べながら
悲痛な叫びを上げるにアフロディーテは苦笑いを浮かべる。
あえて何も言わないのは複雑な女性心に理解があるアフロディーテの最善の配慮なのだろう。

「本当に何これ!?陶器!?どんなケアしたらこんな肌になるのっ!?」
「特に私はケアはしていないけど・・・」
「・・・ええっ!?ありえないっ!?」

おずおずと告げられた一言は衝撃の一撃だったらしくはついにテーブルに突っ伏して動かなくなった。
まるでこの世の終わりだと言わんばかりの沈み具合である。
シュラが漸く静かになったのを見計らって不思議そうに訊ねた。

「何がそんなにショックかは知らんが俺から見ればも充分綺麗だと思うが・・・」

その言葉に顎をつけたまま顔をあげるとは眉間に皺を寄せた。
やはり表情は何処か哀愁を帯びている。

「それは嬉しいけれど、私だって女なんだから美容に対しては敏感なのよ。
肌の手入れだって色々試行錯誤して保ってるのに何もしてないのにあんな綺麗な肌見たらショックよ」
「確かに女性は美しくある為に様々な努力を積み重ねているからね」
「そういうものか。だが、ショックを受けていた所でどうなるものでもあるまい」
「だからこそ、悲しいんでしょうー!」

吼えるにこれ以上口に挟めば先程のデスマスクの二の舞だと口を噤む。
そこで漸くデスマスクの存在を再認したシュラは倒れているデスマスクに声を掛けた。
椅子が顔のど真ん中ストライクでめり込んだ衝撃は中々のものだったのか
聖闘士である筈のデスマスクは未だ沈んでいた。

「おい、生きてるのか?デスマスク」
「・・・・っの」
「・・・?何かいった・・・」
「この馬鹿女っ!!いきなり椅子なんか投げてくるんじゃねぇーっつの!鼻骨にひびでも入ったらどうすんだ!?」

勢いよく飛び起きながら懲りずにに掴み掛かるデスマスク。
やめておけばいいのにとシュラとアフロディーテが揃って思ったのは言うまでもない。
大体、さっきの話で不機嫌極まりないにそんな事を言えば
どうなるかは解りきっている事なのだろうがどうにも怒りと痛みで頭が回っていないらしい。
ちなみに二人がこんな喧嘩をするのは日常茶飯事だがほぼ十割の確率でが勝利するのが通例である。

「煩い!鼻骨が折れてたら整形手術するいいきっかけになるし、
構いやしないんじゃない?少しはましな顔になるわよ。大体、あんたのは自業自得でしょ!?」
「まるでブサイクみたいな言い方するな!アフロディーテに肌の綺麗さで負けてるお前なんか女失格だろうが!?」
「じゃあ、あんたは聖闘士なのに変哲もない椅子に負けたんだから覚悟は出来てるのよね?」

デスマスクの発言に青筋を立てながらにっこりと満面の笑みを浮かべるが完全に目が笑っていない。

「はぁっ?何が・・・」
「シオンか沙織ちゃんに言ってリストラされる覚悟よ?」

教皇と女神の名前を耳にして暫く固まるデスマスク。
だが、次の瞬間に先程の怒りは微塵も感じさせない体勢に入った。
土下座で冷や汗を流している姿は少々哀れにも感じたシュラだった。

「・・・その二人に言うのだけはちょっと勘弁。申し訳御座いませんでしたっ!」
「次の休みに買い物代金出してくれるなら考えないでもないわ」
「おまっ!?ふざけ・・・」
「いいの?言うよ?」
「すんません。出させて頂きます」
「よろしい」

結局、今回も惨敗したデスマスクはぶつぶつと文句を言っていたがが一睨みすると一瞬で沈黙した。

「あーでも、本当にどうやったらそんな肌になるのかしら・・・」
「まだ言っているのかい?シュラも言っていたけれど私もは充分綺麗だと・・・」
「だから!それじゃあ、納得出来ないの!あーもういっそアフロディーテと同じ生活をすればなれるかしら・・・」

そこまで言った所では勢いよく立ち上がった。

「そう!それよ!!」
「は?」
「だから!アフロディーテと同じ生活してたら肌綺麗になるかもって!
普段、自分では気付かないような美容習慣があるのかもしれないし・・・そうしましょう!」

これで解決と微笑むを余所にシュラが慌てて止める。

「お前、そうは言っても一緒に生活するって恋人同士とはいえ、同・・・ぐふっ!?」
「え?何か言った?シュラ?」

いきなり呻きを上げたシュラの声に不思議そうにが振り返るが首を横に振るのが精一杯なシュラ。
そのテーブルの下では思いっきりアフロディーテに蹴り飛ばされた弁慶の泣き所が赤くなっていた。

がそれでいいなら私は構わないよ。寧ろなら歓迎だしね」
「本当?良かった。じゃあ、今日から早速お邪魔しようっと宜しくね」
「うん、こちらこそ末永く宜しく」

円満に話が纏まり、機嫌よく紅茶を飲み出した
その隣で未だ悶絶しているシュラを見てデスマスクが呟いた。

「シュラも深入りしねぇ方が安全だぜ?アフロディーテの奴、に関しては容赦ねぇからな」
「・・・心得ておこう」
「しかし、同棲に上手く持ち込んで更に末永くってそのまま結婚でも持ち込むつもりじゃねぇのか、あれ」

女より美人かもしれないアフロディーテだがその心の奥底は誰よりも男らしいと思う二人だった。


美しき獣の罠に嵌った姫君の行方は?
(ディーテ、家具まで買ってくれなくても良かったのに)
(気にしなくてもいいよ。私の為でもあるからね)(それなら、いいけど?・・・ん?)