いつか散り逝く運命だというのに。
私は、私は貴女を愛してしまった。
刹那に散り逝く宿命と知れども
浅い眠りから覚めてみれば隣に温かい温もりを感じた。
柔らかい春の日差しのようなその温もりに
再び眠りに誘われそうになったが瞳をゆっくりと開けてその正体を見る。
そこには神気を纏った清らかな姿の少女が一人。
進む力と鎮める力を持つ龍神の神子・・・応龍の神子の姿があった。
「(神子!?な、なぜ、私の隣に・・・・?)」
驚きを隠せず目を見開き固まった。
動こうにも動いてしまえば彼女を起こしてしまうかもしれないと思ったからだ。
頬に熱が集まり、火照るのがわかる。
だが、とりあえず落ち着いて状況を把握しようと深呼吸を繰り返す。
しかし、彼女がここに訪れた記憶がないものだからどういう状況なのかさっぱりわからない。
動悸も静まるばかりか増すばかり。
冷静な思考など働かずただ為されるがままでいた。
「ん・・・・っ・・・・??」
そんな折、天の救いなのだろうか神子が薄っすらと瞳を開けた。
「神子・・・?目が覚めたのか・・・?」
「・・・ああ、敦盛。・・・寝てたのかな?私は」
どうやらいつの間にやら眠っていたらしく覚えていないらしい。
私は微笑み肯定するとゆっくりと神子は身を起こした。
「それは悪いことをしてしまった。・・・というか神子じゃない。だ」
「あ・・・すまない。殿」
彼女は神子と呼ばれたことに不快を示し、そう言い直した。
殿は神子と呼ばれる事を嫌う。
彼女曰く、私たち八葉が言う神子は白龍の神子の事であり、応龍の神子である殿の事ではないと。
だから神子と呼ばれる所以はないと。
頭では解るのだがやはりこの神気を持っていて神子と呼ばぬというのは失礼にあたる気がしてならない。
そういう気持ちがあるからこそ、時折、神子と呼んでしまうのかもしれない。
そんなことを思っていると
彼女はまたうつらうつらと体が揺れだしてしまった。
「殿・・・?」
「あ、うん。起きてる。眠いが起きてる」
言い聞かせるように瞳を開けてそう告げる彼女はまるで幼子のようで可愛いと思った。
そして、自然と笑みが浮かんでしまう。
「殿。眠ければ私が居るから寝ていて構わない」
「んー・・・そう、する。・・・あ、それとでいい」
「は・・・?」
「殿なんてつけるほど偉い奴じゃない。だから呼び捨てでいい」
そう言い切ると彼女は私の膝の上に頭を乗せて眠りについてしまった。
連日続く戦いの疲れが出てきたのかもしれない。
私は笑みを浮かべてその頭を撫でてやる。
「・・・貴女が望むなら私はなんでも叶えたい」
いつか散り逝く宿命だとしても今はただ貴女の傍に居たいと浅ましくも願う。
それは罪なのかもしれない。
それでも願わずにはいられない。
彼女の全てを愛おしいと思うから。
だから、願わくばこの身が消えるその日まで。
彼女を守り、彼女の隣に立ち続けることを願う。
貴女がそれを望んでくれたから。
あの出会いの日にそう望んでくれたから。
「貴女は・・・一体・・・?」
「私は応龍の神子。という。敦盛。
私は望む。お前の願いが叶う事を。お前が一緒に戦ってくれる事を」
貴女の言葉はこの穢れた身に染み渡り全てを浄化し尽すのだ。
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