私は物心がついた時にはゲージに入れられ、眩しい光を当てられ暮らしてきた。
その理由は私の容姿。
殆ど普通の人間と変わらないが一つだけ違うのは背に生える二つの白い翼。
それだけなのに私はずっとゲージの中に捕らえられている。
外の世界を知らぬまま。
でも、それはあの日までの話。






美しき鳥籠の君







「これは素晴らしい・・・!」

また汚い大人の声が聞こえる。
その目は飢えた獣のようにギラギラと私には光って見えた。

「そうでしょう。白翼の一族。
今では数体しか残っていないと言われている希少価値の高い一族ですよ。
私もこれには一番金を掛けて大事にしておりますよ。あははははっ!」

何が大事にしている、だ。
私をモノとしか見ていない者達がよく言う。
そう思うも私はこのゲージの外に出ることはできない。
まさに籠の中の鳥。
私は今日もそんな事を思う事しか出来なくてただ一日が過ぎていくのだと思った。
けど、その日は違った。
私の目の前の二人が去ろうとした瞬間、あたりの照明が全て落ち、周りは暗闇に包まれた。

「何だっ!!予備電力はどうなっている!!」

だが、その答えが返ってくる事はなかった。
変わりに聞こえてきたのは部屋の扉を蹴破る凄まじい音だった。

「貴様ら!!何者だ!!」

すると二つ入ってきた人影の内、小さい方が物凄い速さで動いた。

「答える必要もないね」

生々しい肉を裂く嫌な音が響いたと思うと
客人の首がごとりと落ち、私の所有者は床に倒れた。
その殺人者ともう一人の男の顔が次第にはっきりと鮮明に見えてきた。
殺しをした方の男は少し背は低めで漆黒の髪は長めで少し癖があった。
顔は衣服で口元が隠れていてよくわからなかったが夜のような男だと思った。
そう、まるで澄んだ夜のような人。
まだ見た事もない夜の色のようで私は心から綺麗だと思った。
もう一人も男で髪を後ろで固めており、長いコートを纏ったえらく人目を惹く男だった。
私は何故か不思議とこの二人に恐怖を抱く事はなかった。

「貴方達、誰?」

私の声に驚き彼らは私を凝視した。
不思議なものを見るように夜色の男が言った。

「団長。あの女、背に翼があるね」
「珍しいな。そういえばどこかの大陸に白翼の一族という
特殊な力を持った一族がいると聞いた事がある。この女はそれだろう。
きっとここの主にコレクションとして捕らえられていたのだろうな」

その言葉を聞いた途端、夜色の男はゲージを壊し、私も抱き上げて下へと降ろした。

「きゃぁ!」
「じとしてるといいね」

私はそう言われながらも地面に足をつけた途端、力が抜けたように座り込んでしまった。

「団長。この女、気に入たね。蜘蛛に入れないか?」
「珍しいな。お前がそう言うのは。だが、面白い。
特殊な能力と言うものにも興味がある。いいだろう。お前名前は?」
「名前?ないわ・・・」
「そうか。ならフェイタンお前がつけてやれ」
「私か?・・・。なんかの本で見た名前ね」
?私の名前は?」

そう訪ねるとフェイタンと呼ばれた男は私には微笑んだように見えた。

「そうね。お前、幻影旅団入るといい」
「げんえーりょだん?」

すると団長と呼ばれていた男が答えた。

「そうだ。俺は幻影旅団の団長のクロロだ。こっちはフェイタン」
「クロロ?フェイタン?私そこに入ったら居場所がある?」
「ある。蜘蛛はお前を受け入れるね」
「それなら私入る。外の世界で生きたいから」

そう、私が言うと二人はおいでと手を伸ばした。
でも、それを邪魔しようともう虫の息の男が私たち目掛けて攻撃しようとした。

「あぶない!!」

私はそれに気づき二人を突き飛ばした。
男が放った弾丸が私に当たりそうになった瞬間、
弾丸がぴたりと動かなくなり宙でとまった。

「な・・・にぃ!?」
「これは念か・・・?」
「これ私がやってるの?」

私は驚きの言葉を発した。
しかし、次第に血の記憶か遺伝子かどうすれば力が使えるか脳が理解し始めた。
私はフェイタンやクロロに攻撃しようとした事。
そして、私を捕らえていたこの男をこの手で消そうと決意した。
今までの枷を全て壊す様に。

「ねぇ?私はあなたが憎い。私を捕らえて、解放しなかったあなたに。
そして、フェイタン達を攻撃しようとした事。それを許すわけにはいかない。その命で償いなさい」

そういった途端、その手には大きな黒い装飾を施された大鎌が現れた。

「魂までも粉砕せよ。魂の狂詩曲(ソウルラプソディ)

その言葉と共に私は大鎌を振り下ろした。
鎌の刃先から獣が現れ、男の体を全て喰らいつくし消えた。
男は完璧に消え去った。
私は色々と術を覚えたようで翼を仕舞う事もできた。
そして、二人に駆け寄って言った。

「私は貴方達のお陰で解放された。ありがとう。そして、これからよろしく」

すると二人は今ままで張り詰めていた空気とは似合わないぐらいの温かい笑みを私に向けた。



「フェイタン!!を降ろせ!!」
「嫌ね。も別に嫌がってないよ。団長関係ないね」
が嫌がってなくてもにはまだ早い!」

フェイタンは先ほどから私を抱きかかえたままクロロと対峙している。
正直言って何をやってるのかよくわからない。
私が旅団に来て一年になった。
私はとても旅団の事が好きだ。
みんな優しくて、一杯新しいものを見せてくれる。
私は今の毎日が楽しくて仕方ない。

「フェイタン。何が早いの?」
が私の事好きになるのは早い言てるよ」
「別に早くないよね?皆も好きだし。一番がフェイタンなだけで」
「きとヤキモチやいてるね。とられて」
「そうなの?クロロ?」
「そうじゃなくてな!!恋人なんてにはまだ早い!」
「団長。うるさい小姑よ」
「フェイタン!!!」
「ねえ?恋人って?小姑ってなに?」

そのやり取りを見ていたシャルやノブナガやマチは、

「なんか団長『娘はお前などにやらん!』って言い出しそうだよね」
「私、今シャルと同じ事考えた」
「でも、フェイのやつも相当なもんだと思うが・・・」
「というよりあそこまでボケボケなもすごいな」
そういって三人はため息をついた。