悪戯な言葉に惑わされ







「子猫ちゃん達ー!!」
「・・・・・」

さらりと身を翻し隣に居た南を引き寄せつつ、叫びながら抱きつこうとしてきた葛城を避ける。
凄まじい音を立てながら転がって行く、葛城。
最終的に職員室の資料棚にぶつかり動きを止めた。

「あ、あの葛城先生が!?」
「悠里。気にしなくていいの。天罰が下っただけ」
「天罰!?」

自分より低い南の頭をぽんぽんと撫でながらは笑った。
訳が判らない南は呆然とその光景を見やる。
そこに授業を終えた他の先生方が入ってきた。

先生に南先生。そんなところでどうかしたのですか?」
「ああ、二階堂先生。実は・・・あれなんですけど・・・・」

南が葛城を指差した。
すると、二階堂は溜息を吐く。

「全く・・・」
「うっわぁ・・・」
「これはまた葛城くんが可愛らしいお二人に何かしようとして天罰が下ったと言う所でしょうか?」
「自業自得ですね」
「だな」

皆がそういって納得していく中、南は一人取り残される。
はというと素知らぬ顔で持ってきた資料を学年主任の机の上に置いた。

「悠里。あれはほっといてご飯に行こう。B6の皆が待ってる」
「そうだったわね。B6の皆が早く来てって言ってたわ」

の一言で一瞬にして葛城の事が頭から飛んだ南だったが間の悪い事に葛城がむくりと起き上がった。

「ちょーーーーーーーーっと待った!!葛城銀児復活!!!」
「・・・・ハァ」

思わず溜息を吐くとはアッシュグレイの瞳を細めて葛城を冷たい視線で射抜く。
すると、葛城は瞬時にの傍により腰を抱く。

「ん〜ちゃぁーん!そのクーーーールな視線が俺の心を・・・・ぐふぇっ!」
「葛城・・・しつこい」

ずるりとその場に崩れ落ちていく葛城。
それを見つめる面々はしっかりとの手が拳を作っていたのを目にした。
南だけはそれに気付いていなかったようだがそのままは南の手を引いて職員室を後にした。
残された面々は・・・

「そういえば彼女は食事を邪魔されるのを一番嫌っていたね」
「そういやそうだな。・・・ま、葛城も誘うなら空気ぐらい読めや。
どうせ断られるって判っていてもよ。だから、モテねぇーんだよ」
「誘うって・・・ああ!もしかして聖帝舞踏祭のエスコート役!?」
「ふふ。抜け駆けだなんて葛城くんも懲りない人ですねぇ」
「全くです」

哀れな末路を辿った葛城を見つめて溜息をつくのだった。
そして、ようやくバカサイユについた二人は優雅に食事を取りながら聖帝舞踏祭の話を聞いていた。

「そんなものがあるなんて・・・知っていました?先生」
「・・・興味なかった」

不機嫌そうに食事を食べながらそう告げる
どうやらさっき葛城に邪魔をされたことでイライラしているらしい。

「担任。保険医に何かあったのか?珍しく感情が出ているが・・・」
「あはは・・・こっちに来る前に葛城先生がちょっとね」
「あのオッサンか・・・」

納得したらしい面々は溜息を吐く。
生徒にまで呆れられる葛城の存在に南も思わず溜息を吐いた。

「ところでよぉ?おめーらはエスコート役いんのかよォ?」
「存在自体を知らなかったんだから居ないだろ」
「そうだわ!絶対参加なら誰かに頼まなきゃ!」

一人焦る南を見てはぼーっと視線を一と瞬へ向けた。

「ん?先生どうかしたのか?」
「俺と草薙を見て何か考えているな」

するとはナイフとフォークを置いて二人を見据えると口を開いた。

「一にする。エスコート役」
「へ?」

急に名前を呼ばれた一は間抜けな声を出す。
すると、皆が驚きの声を上げた。

「待て待て待て!俺!?」
「嫌?」

首を傾げて上目遣いに尋ねる
それに「うっ」と呻いて顔を赤くして視線を逸らす一。

「いや、むしろ嬉しいけどさ・・・・じゃなくてどういう基準!?」
「ん・・・・B6で一番常識人。身長とか照らし合わせても丁度いいし」

そう告げるとまた食事を進める

「確かに先生の言う事は納得できるわ」

南が深く頷きながら納得している中、他の面々はまだ騒いでいる。

「えーーー!!ゴロちゃんも先生のエスコートしたかったのにぃいい!」
「しょうがない・・・・」
「じゃあ、俺はもう一人をターゲットにするかァ!!けけけ!!」
「先に誘っておけば・・・・」
「何故俺ではないんだ!?まあ、いい。
一が保険医をエスコートするなら俺は担任をエスコートしてやろう!」
「翼君はなんでそう偉そうなの!!!」

面々が南のエスコート役で騒ぎ始めたのを見てまだ考え込んでいる一の隣に座る。

「で、いい?エスコート」
「も、もちろんいいけどさー・・・・」

何か言いたげな一を見てはふと微笑む。
それを見た一は顔を真っ赤に染める。
滅多に表情を見せないが微笑んでいる。
並みの美貌でないだけに思わず照れてしまった一。
視線を逸らして落ち着かせようとすると不意に耳元でに囁かれた。

「本当は一じゃなきゃ嫌だったからなんだけど」

そう告げられて一の思考は再び止まり、それを理解するや否やさっき以上に顔を赤く染めた。

「そ、それって!?」
「・・・・秘密」

楽しげにそう告げるとはそのまま立ち上がりバカサイユを後にした。
残された一はまだ騒いでいる面々の騒々しい声を聞きながら顔を両手で覆って呟いた。

「期待しちまうだろーが」



青少年は期待せずにはいられない。
(だって、初恋だから仕方ないだろ?)