淡い紅が花開く時、人は恋に落ちる。
そう、恋をするのではなく。
恋に落ちるのだ。
淡く、淡く、咲き乱れ
酷く高鳴る鼓動、勢いよく巡り狂う感情。
これが人の感情というものなのだろうか?
そう、自身に幾度と尋ねた事があった。
人を模している自身に人としての感情が芽生えたのかと。
そんな事はありはしないと思っていた。
けれど、確かに息づくこれは間違いなく存在していた。
「白龍」
名を呼ばれる度に一際激しく鼓動が高鳴る。
「白龍」
再び名を呼ばれて広がる淡く淡く温かな感情。
思わず顔は綻んで笑みを浮かべる。
「。私を呼んだ?」
「ずっとね。何を考えていたの?」
優しく頭を撫でられる。
私の方が背丈が高い為少し背伸びをする姿がなんとも愛らしい。
未熟な龍である私を温かく見守り導いてくれる私の応龍の神子。
特別な・・・そう、とても特別な存在。
「の事を考えていたよ」
「私の事を?」
貴方は今度は驚いて瞳を大きく見開いた。
その瞳は青い海のような優しい色をしている。
彼女を表したような優しい色。
「が居てくれてよかったと私は思っていた。私は、貴方のおかげで龍として成長している。強い龍へと」
強い龍となって大人の姿に変わって。
貴方をもっと守れるようになって。
満たされて、幸福で。
貴方が全て与えてくれた。
私が望んだものを与えてくれた。
だから・・・
「お礼が言いたかったんだよ。にありがとうと」
「・・・お礼を言うのは私だよ」
今度は私が驚く番だった。
私に礼を言う?
何について?
それが全く理解できなかった私はただ、一言だけ呟く。
「私に?」
「そう。白龍にだよ。私は白龍に出会えって嬉しかった。今もこうやって一緒に居れて嬉しいよ。
だから、ありがとう。出会ってくれて、一緒に居てくれて、守ってくれて。ありがとう」
「・・・私もやっぱりありがとう」
だって、私も貴方と出会えて、一緒に居れて嬉しいから。
幸せだから。
それに・・・
貴方に恋に落ちて私はとても苦しいけれど幸せだから。
だから、だから・・・
私は、貴方に礼を言おう。
「ありがとう」と。
何度だって告げよう。
この気持ちを。
でも、いつか。
許されるのなら。
秘めた想いも受けて欲しい。
今はまだ言うべきではないから私の心に留めておくけれど。
私は、いつも貴方を特別に想っているよ。
「。そろそろ戻ろう。神子たちが待ってる」
「そうだね。一緒に戻ろうか。白龍」
「うんっ!」
どちらからともなく指を絡め手を繋ぐ。
触れ合うその先からまた幸せが満ちていく。
また、貴方への想いが咲き乱れていく。
貴方は私の至上の存在。
(貴方の為ならば逆鱗さえも捧げよう。)
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