まるで餌付けされる鳥の様に微かな囀りと共に微笑む君が愛おしい。
いつからか君が大切で大切で仕方がなくなり。
君を決して離したくないと強請り願うようになった。
君が俺の心を温めてくれるから。
幼子の様に寄り添い愛
「はい。食べるんでしょ?」
声に出さずにこくりと頷く事で意思表示を示すにそっと食べ物を口に含ませてやる。
もごもごと口を動かし、それを頬張るとやや少しその無表情な顔に嬉しさが滲み出る。
漆黒の髪を床に散らばらせ、漆黒のフリルのワンピースと黒が混じり合い同化している中。
の肌の真白とアッシュグレイの瞳、桜色の唇だけが一際際立っていた。
同じ身長故に座っても立っても同じ視線が交じり合う。(いつか必ずを越してやるけれど。)
「しっかし、は本当によく食べるね。まあ、俺がいない時には食事しないから差し引きゼロなんだろうけれど。
あ、そうだ。の事、話つけたんだ。俺も最近忙しくなってきたし、俺の手伝いとして仕事について来てもいいようにさ」
「つまり、結也の傍にずっと居れる?」
こてんと首を横に傾げて不思議そうに目を輝かせている。
可愛いなぁと思いながら頭を撫でてやったら気持ち良さそうに目を細めた。(まるで猫みたいだ。)
「そういう事。が天才だって話したら二つ返事でOK貰ってさ。但し俺が監督をしっかりするって事で」
「嬉しい」
「そ?それならよかった。家に帰る回数が減ってに餓死されちゃったら困るから頼み込んだかいがあったよ」
彼女ならば本当に餓死しかねない。
食する事や様々な事に無欲、無関心で。
一人でいる時は殆ど眠っている。
彼女がそうなってしまったのは過去に愛を注がれなかったから。
俺とある意味同じだ。
家族の愛が欲しくて欲しくて仕方が無くて。
ただ、違うのは彼女は全てを求める事を諦めてしまった。
生きる事も何もかも。
そんな彼女に出会ったのは偶然であり、自然であり、必然であったのだろう。
同じ様なトラウマ、コンプレックスを抱く者同士で最初は惹かれ合った。
けど、今は違う。
今は互いに互いの存在が愛おしいから。
「結也?」
「ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。疲れてるかもしれない」
ここ最近睡眠時間なんてあってなかったようなものだし。(大体笛吹さん人使い荒いんだよなぁ。)
彼女の顔を見てるとほっとしてついつい全てがぼろっと姿を現すのだ。
彼女の前では自然体で居れるからかもしれない。
「結也」
「何?」
名前を呼ばれて振り返ると彼女は立ち上がり、俺を引っ張り出した。
それにしぶしぶ立ち上がると彼女に導かれるまま歩き出す。
彼女の向かった先は寝室だった。
彼女は大きなベッドをぽんぽんと叩くと此方に視線を向ける。
どうやらちゃんと寝ろと言う事らしい。
苦笑を浮かべながらも言われた通り眼鏡を置いて上着を脱ぎ、ラフな格好になるとベッドへと横になった。
彼女は横に立っており、自分はどうしようか迷っているらしい。
そんな彼女の手を引くと彼女はそのままベッドへダイブした。
「も一緒に寝よう。起きたら久々に家を出るんだから少しでも疲労を減らしておかないと倒れる」
「判った」
「ん。いい子。いい子」
彼女を抱きしめてゆっくりと眠りに落ちていく。
よっぽど疲れていたのか眠るまでに時間は掛からなかった。
それから数時間程して携帯の鳴る音で目が覚めた。
誰だろうかと見て見ればディスプレイには笛吹の文字。
嗚呼、本当に人使いが荒いと思いながら身体を起こす。
彼女もそれに釣られて目が覚めたらしく、目を擦りながら身体を起こした。
そして、電話を終えた俺を見て呟く。
「行く?」
「うん。今日からはも一緒だ」
「うん」
彼女を着替えさせて共に玄関を出た。
久々の外の光が眩しいらしいは酷く目を細めて眉根を寄せた。
が、適応力が高いらしくすぐさままた無表情に戻ると俺に向き直った。
「結也。これからもずっと一緒に」
それは初めて彼女から聞いた願いだった。
永遠を望まなくなった彼女の願いだった。
俺は目を見開いてしばらく見入ったがゆっくり頷いて背に腕を回す。
華奢で脆く壊れそうな細い身体を感じながら告げる。
「うん。ずっと一緒に居よう。」
その後、身体を離して待っている笛吹さん達の元へ向かおうとしていた事を思い出す。
だけど、離れた時に見た彼女の笑顔が余りに綺麗で愛おしくてもう少しだけ待っていて貰おうと思い、彼女に口付けた。
無欲な彼女の唯一の願い。
(ただ、傍に居て互いを感じていたい。それだけ。)
(そして、それは俺の願いでもある。愛し愛され共に居たいと。)
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