太陽の様に眩しいその笑顔に惹かれた。
視線が離せなくて囚われてしまった私の心は、感情は急速に加速していった。
気付けばいつも貴方に視線を奪われて惑わされる。
貴方の為なら何だって出来ると想った。
例え、貴方の瞳に私が映らなくても。
例え、貴方の傍らに居るのが私じゃなくても。
貴方が幸せならいい、と。
太陽の残像
「星彩の誕生日の贈り物、ね・・・」
「すまない!こんな事、ぐらいにしか訊けなくて・・・」
「いや、別に謝られる程の事でもないから気にしないでよ。
で、関平自身は何かちょっとは思いつかなかったの?」
申し訳なさそうに頭を下げる関平の肩を
軽く二度程叩くと関平は顔を赤くしながら酷く小さな声で何かを呟いた。
「花、とか?」
「・・・まあ、悪くはないわね。でも、どうせなら形に残る物もあげなさいよ」
「やっぱりその方がいいものなのか?」
「んー別にそうって訳じゃないけど・・・
例えば星彩に髪飾りを贈ってそれをつけてくれたりしたら関平、嬉しくない?」
私がそう告げると関平は目を閉じて腕を組み考える。
数秒後、ぱちりと瞳を開けた関平は口元を片手で覆いつつ、呟いた。
「嬉しい、と思う」
「でしょう?折角贈り物するならそういう楽しみも味わっていいんじゃない?」
「そ、そうか。それもありなのか・・・」
思いつかなかったという素振りでうんうんと一人でに頷く関平。
くすくすとそれを眺めながら微笑ましいと思う半分、
関平にここまで思われている星彩が羨ましいと思った。
(嗚呼、醜い感情・・・)
心中で自嘲しながらもその後も関平の相談にのってやる。
そして、ある程度ものを決めたら早速市に行こうと関平は立ち上がり、駆け出した。
私は手を振ってそれを見送るが関平はぴたりと動きを止めてこちらにまた戻ってきた。
一体何だろうかと不思議に思いながら振っていた手を下ろす。
「どうかした?」
「肝心な事を言い忘れたと思って・・・
その、相談に乗ってくれてありがとう!みたいな友人を得れた事を嬉しく思う!」
純粋な満面の笑みを浮かべてそう告げる関平。
嬉しいと言えば嬉しいのだけれど私は素直に喜べずに曖昧な笑みを浮かべた。
「―――!急に、改まって恥ずかしい!もう、ほら!判ったからさっさと買っておいでよ!」
「あ、うん。でも、本当にありがとう!!じゃあ!」
そのまま手を振って今度こそ姿が見えなくなった関平の立ち去った場所を見つめる。
先程言われた言葉を思い出して私の表情は次第に失われていく。
その場に立ち尽くし、泣く事も出来ぬまま。
「友人、か・・・」
良かれと思って言ってくれた彼の言葉が私の心を鋭く抉る様に射抜く。
広がる痛みを感じながらも私はただ、無表情で立ち尽くし続けた。
太陽が隠れ、分厚い灰色の雲が空を覆う。
まるで、それは私の心のようだった。
(これが、全て、夢であったらいいのにな)
ありえる事がない事を望んで私は瞳を伏せると自嘲を含んだ嘲笑を浮かべる。
でも、瞼の裏に焼きついた彼の表情がふと浮かび、嘲笑はすぐ消え去った。
純粋な太陽の様な笑顔を無邪気に浮かぶ彼の姿が私を完全に狂わせてくれない。
なんて、因果だろうか。
そして、何と私は浅ましいのだろうか。
彼の前では少しでもいい女に見られたい。
もしかしたら、少しだけでも私を好きに、特別に想ってくれるかもしれない。
二人の間に入り込む隙なんてないのだと判っているのに。
それでも私は、幾度も、幾度もそう思ってしまう。
嗚呼、これも、一種の狂気なのかしら?
(愛し、愛されるなんて夢物語)
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