大嫌いな人・・・自分。
そんな私を愛してくれたのはとても綺麗な人。
アンバランスなココロ
私を愛してくれた人はどこまでも綺麗な人。
心も容姿もどこまでも美しくて神のように綺麗な人。
そんな風にきっと言ったら彼は「そんな事ある訳ないでしょ」と切り捨ててしまうだろうけど。
それでもとても綺麗で完璧な人だと思う。
そんな彼に愛されている私はというと特別な力もなく綺麗な容姿でもない。
本当に何故こんな私を好きになったのかと一度尋ねてみると彼は「貴方だからこそ好きになったんですよ」と真顔で言われてしまった。
何一つ出来ない私の何がいいのか本当に不思議で仕方ない。
例えこの私を彼が愛してくれていようとも私はやっぱり自分が嫌いだ。
「ねぇ、ムウ。私、やっぱり自分が大嫌いよ」
ソファの上でクッションを抱えながらそう呟く。
するとムウはゆっくりと溜息をつきながら私の隣に座った。
「またですか?本当にそれだけ自分を嫌いだと否定できるなんてもう病気みたいなものですよ」
「だって嫌いなものは嫌いなんだもの」
私がそう言って不貞腐れると彼は不思議そうに尋ねてきた。
「いつも不思議に思っていたのですが・・・自分のどこがそんなに嫌いなんですか?」
「全部」
「全部って・・・自分の存在全否定ですね・・・まるでそんなを好きな私すら否定されてるみたいじゃないですか」
そう言われたところで全部嫌いなのは事実なんだから仕方ない。
全部嫌いなのだ。
何一つ満足にできない中途半端な自分が。
こんな特別素敵だと言えるような魅力の無い私を好きなムウの方が私にとってよっぽど不思議である。
「じゃあ、ムウは私のどんなとこが好きなのよ?」
拗ねてクッションに顔を埋めながら尋ねてみれば少し間をおいて声が響いた。
「そうですねぇ。例えばそうやって愛らしく拗ねる姿とか。キスをした後に顔を紅く染めて俯く姿とか。それから・・・」
「す、ストップ!ストップ!!わ、わかったから!!」
「そうですか?まだまだあるんですけどね」
そういってにっこりと笑うムウはちょっと怖かった。
でも、やっぱりそう言われて納得できるほど私は簡単じゃない。
そこでまたぐるぐると考え出した私を見てムウがこう言った。
「じゃあ、。私のことは好きですよね?」
「・・・好き、だけど・・・」
そんなことを改めて聞かれて私は顔を赤くしつつムウから背けた。
しかし、すぐさま正面を向かされてしまう。
「ならそのが好きな私が好いているんですから自分をちょっとだけでもいいので好いてください」
「そ、それはその・・・」
「なんなら好いてくれるまで貴方の好きなところを一から全部言って差し上げますが?」
「わ、わかった!わかった!!」
脅しに近い言葉を投げかけられて私は慌てて頷いた。
この時、言わなかったけどちょっとだけそれもいいかもしれないと思った。
私が好きなムウが好きだと言ってくれる私。
それならばちょっとだけ好きになるかもしれないなって。
私は頑固で捻くれてるからまだまだ自分が嫌いだって気持ちは変えられないけれどね。
少しずつで言いから変わろうと思ったのだった。
アンバランスなココロを抱いた私にはバランスのいいココロを抱いた貴方が丁度いいのかもしれない。
だってアンバランスさを貴方がちゃんと調整してくれるから。
(アンバランスな心を持った自分嫌いな少女が自分をちょっとだけ好きになったお話。)
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