「私、ムウが大好きよ?」
「ありがとうございます。私も好きですよ。さぁ、次の用事を済ましてしまいましょう」

軽く流されてしまった私の告白。
ああ、今日も私の一世一代の告白は失敗。






恋愛速球ストレート122







「あああっ!なんで駄目なの!!」
「まあ、まあ。少し落ち着いたらどうだい?ほら、紅茶やお菓子もあるのだから」

私の嘆きの叫びが聞こえてくる双魚宮の中。
慰めてくれているのは魚座の黄金聖闘士であるアフロディーテ。
兄的な存在である彼はいつも私の相談に乗ってくれる優しい人。
そんな彼に相談しているのは私の恋愛の相談なのだ。
もう、何度となくこうやってお茶を飲みながら話をしている。
最近に至っては毎日だ。
その理由は・・・

「なんで毎日告白してるのに気づいてもらえないの!本気にしてもらえないのよ!もう今回で122回目よ!?」

そう叫び項垂れるとドサクサに紛れていつもお茶を飲みにきているシュラとデスマスクが答えた。

「それは告白し過ぎではないか?」
「俺もそう思うぜ?それだけ言われたら普通は本気にしねぇよなぁ。単に友達とかそういう好きだと勘違いするだろぉーよ」

溜息混じりに告げられて私は言葉を詰まらせる。
それはわかってるのよ。
でも、でも!!

「好きすぎて口に出してしまうのよ!!」
「・・・これは重症だね」
「っつーかバカ正直過ぎ」

ううっ、そんなことわかってるわよ。
自分が嘘のつけないバカ女だってことぐらい。
だからこそこうやって相談してるんじゃないのよ。
紅茶を飲みながら自分の馬鹿さ加減に軽く溜息をつく。
デスマスクがふと気づいた様子でこちらを見た。

「おまえさぁ。会うとそうやって告白しちまうんだろ?」
「うん。毎日会いに行ってるし」

素直にそう告げるとデスマスクは私を指差した。

「それだ!それ!!」
「え!?な、何よ!?」
「だーかーら!会いに行くのをやめるんだよ。
そうすればお前は告白しねぇーし、急に会いに来なくなったことで何か変化があるかもしれねぇだろ?」

それを聞いて私は少し考えた。
確かにそうすれば告白することもない。
そして、会いに行かない間に何か変化が見られるかもしれない。
でも、ただ一つ問題があるのだ。

「でも・・・私、会いに行こうと無意識にしないかしら・・・」

そう呟くとデスマスクが凄い勢いで立ち上がった。

「お前なぁあああ!!ムウをものにしたかったらそれぐらい我慢しやがれぇえ!」
「うわぁああ!!ごめんってば!!い、いひゃいひゃいいい!!」
「デスマスク。落ち着け。気持ちはわからなくもないが」

シュラが力いっぱい私の頬を引っ張っていたデスマスクを取り押さえる。
私はほっとしてひりひりする頬を撫でるとアフロディーテが寄ってきた。

「そうだよ。、大丈夫。頬が真っ赤だけど」
「痛かったぁ〜」
「おめぇが悪いんだろうがっ!」
「わ、わかってるよー!うっしゃあ!じゃあ、明日から言うとおりにしてみるよ!!」

意気込んで立ち上がって燃えている私の背中を心配そうな三人の視線が射抜いたが気にしないことにした。
それから一週間。
何度かムウに会いそうになったけれど今のところは一度もあってない。
それをアフロディーテたちに告げると驚いた様子だった。
実は結構もう限界に来たりしているのだが今日はまだ大丈夫。
何故なら今日はシオン様とお茶をしながらお話をする約束をしているのだ。
そのお話の内容がムウの子供時代のお話。
だから、今日はまだ頑張れると意気込んでいた。

「シオン様!こんにちは!」

元気よく教皇の間へと入っていくとそこにはシオン様の姿があった。
どうやら丁度私を迎えにいこうと自室から出てきたところらしい。

「おおっ。よく来たのう。。さぁ、色々な菓子も用意している。こちらへ来るのじゃ」
「はい!」

シオン様に案内されてシオン様の自室入るとそこには本当に色とりどりのお菓子が並べられていた。
私はそれが嬉しくて慌てて席につく。

「うわぁ。本当に色々なお菓子がありますね!」
「そうじゃろ?今日はそなたが来るからのう。色々揃えてみたのじゃ。最近は仕事も忙しく、そなたとゆっくり話す機会もなかったからのう」
「楽しみだったんじゃ」と笑みを浮かべてくれたシオン様になんだか私も嬉しくなった。

それからというもの容易してくれたお菓子をつまみながら会話を楽しむ。
ムウの幼い頃の話。
今は落ち着いているけれど昔は泣き虫だったとか。
シオン様に追いつきたくて無理な修行をしてみたりとか。
今のムウからは考えられないような可愛い話ばかり。
私の知っているムウはいつも優しく微笑んでくれて強い人。
そんなイメージがあったからまた新しいムウの一面を知った私はなんだかまたムウが好きになった。
そう思っているとシオン様が唐突に尋ねてきた。

「そういえば。お主はムウが好きなのであろう?」
「な、なんですか!藪から棒に。決まってるじゃないですかそんなの」

顔を赤く染めながらそう告げるとシオン様はにっこりと笑った。

「ならよいのじゃ。いや、最近ムウがの姿を見ないので避けられているのかと落ち込んでいたのでな」

その言葉には思わず立ち上がった。

「ムウがですか!?」

いきなりの大声にシオンは驚いて目を丸くした。

「あ、ああ。そうじゃが。どうしたのだ?」
「あ、いえ・・・」

私はどう答えていいのか思い悩み言葉を濁した。
まさかムウと恋人同士になりたいと色々試行錯誤しているとは言えるわけもないし。
だが、シオン様には隠せなかったようだった。

「なるほどのう」
「え?」
「わしはてっきりそなたらはもう恋仲だと思っていたが。
どうやらまだくっついておらんぬようじゃな。それで今現在駆け引き中と言う訳か」
「な、なんでわかっちゃうんですか!?」

驚いてそう告げるとシオン様は楽しげに笑い、ウィンクをして言った。

「伊達に長生きはしておらんぞ?でも、そろそろ会いに行ってやってくれ。あれは結構寂しがり屋だからのう」
「で、でも・・・」
「ふっ。安心せい。駆け引きの効果ならきっとすぐわかるからのう」

優しい笑みでシオン様にそう言われた私。
シオン様はムウのお師匠様だし、信頼に値する言葉だと信じて私はムウの入る白羊宮に向かった。

「ムウ〜居る??」

声をかけて白羊宮に入ってみるがどうやら出かけているようだった。
私はどうしようかとしばらく考えて立ち尽くしていたが日も暮れ始めていたので仕方ない帰るかと歩き始めた。
だけど、その歩みは途中で止められた。

!」
「あ、ムウ。・・・・うへっ!?」

ムウの声が響いて帰ってきたのかよかったと思っていると私は腕を力強く引っ張られてムウの胸へと引き寄せられた。
驚きのあまり変な声が出るし。

、よかった・・・」

急に抱きしめられて困惑しつつも頬を染めていると
そんな声が頭上から響いてきて更に抱く腕の力を強くされたものだから私は痛みを訴えた。

「ムウ・・・?あの、ちょっと痛い・・・」
「あ、ああ!すみません」

珍しく余裕のない声で顔を赤くしたムウは私から慌てて離れた。

いいのだが互いに喋らなくなって重い沈黙が訪れる。
疑問はいっぱいあった。
でも、でも、急に抱きしめられたりするし。
混乱して言葉にでないのだから。
私はどうしたらいいのかわからなくてムウへと視線を向けると丁度ムウもこちらに視線を向けてきて更に気まずい雰囲気に。
私はついにそれに耐え切れなくなって大きな声を上げた。

「あ、あのさ!ムウ、今のは・・・」
「あ、あれはその・・・が会いにきてくれたのでほっとして・・・」
「あのそれって・・・心配してくれてただけ?」

率直に聞くとムウは何かを言おうとして言葉を濁して黙り込んでしまった。
しかし、すぐさま何か決意したような表情を浮かべて私に声をかけてきた。


「は、はい?」

なんだかいつもより男らしく凛とした態度のムウに私は心臓の鼓動をバクバク言わせながらムウを見た。
すると、ゆっくりとムウの顔が眼前に広がって・・・・

「・・・・!?」

私は、今、何をされてるのだろう・・・?
今、私の唇とムウの唇が重なっていて彼の端整な顔立ちが視界に入っていて。
睫毛がすごく長いなんて思いつつ・・・じゃなくて、私、今、ムウにキスされてる・・・?
そう、確信すると同時に私の唇からムウの唇が離れていった。

「なっ・・・!なっ・・・!!?」
「すみません。突然、こんなことをして。でも、私は後悔していませんから。だって、私はを愛してますから」

混乱しているのも束の間彼はまた大きな爆弾を投下した。
何を言ってるんだろうとか思いつつもちゃんと頭では理解できていて。
でも、驚きのあまり声も出なくて。
顔を赤く染めることしかできなかった。
すると、ムウは不安そうに私の顔を覗き込んできた。

「それとも他に好きな人が・・・?」
「ち、違う!そうじゃなくて!だって・・・!!私、いつもムウに告白してたのに。ムウ本気にしてなくて・・!」
「あれはそうだったんですか・・?てっきり私はアフロディーテたちと同じ好きだと」

ああ・・・やっぱりそう思われていたのかと項垂れる。
だけど、ムウは私を好きだといってくれた。
私はちゃんと今答えをかえしていないよね。
そうだ。
私、項垂れている場合なんかじゃない。
そう思うと同時に私は顔を勢いよく顔を上げた。

「ムウ。私も・・・私もムウが好きだよ!!」

急に顔を上げてそう告げたからかムウはきょとんとしたがすぐさま優しい笑みを浮かべてくれてまた私に口付けを落とした。
私はまた顔を赤く染めたけれどムウと同じように優しい笑みを浮かべた。
どうやら私の告白失敗記録は122回目でストップのようです。