私がもし死したならば貴方は少しでも悲しんでくれるだろうか?
涙を、流してはくれるだろうか?
私を、想ってくれるだろうか?
もし、少しでも私を想ってくれたならばそれだけで私は幸せです。






Sacrifice Lover







魔人でなくなりつつある貴方の姿を見て気付きました。
このままではいつか貴方は死してしまうと。
貴方に愛されれば愛される程に貴方の姿が見えてきて。
弱り、脆く、儚い存在へと変貌を遂げているのが判った。
人の身である私を愛したが故に貴方は弱体化が急速に進んでいる。
人の心に近しい愛情を理解し始めたから。
どうして、貴方は魔人なのでしょう。
一人の人ならばこの様な事もなかったでしょう。
そして、どうして貴方は私を愛してしまったのでしょう。
愛さなければ・・・愛を知ろうとしなければこうもならなかったでしょうに。
貪欲に謎だけを求める魔人という化け物でいたならば死する可能性など刹那にも無かったでしょうに。
もう一つ、私は悔いる事があるのです。
何故、私が貴方を愛してしまったか。
愛さなければ愛し合う事もなく貴方は人に近付く事もなかったでしょうに。
嗚呼、無常、後悔、慟哭。
嗚呼、諸行無常、是生滅法、生者必滅。
幾ら思えど状況が変わる訳でもなく、私はただ憂いた。
けれど、それも今日で御終い。
貴方の為に出来る事を私はしようと思います。
貴方はきっと赦しはしないでしょう。
永遠に、永劫に、永久に。
それでも、私は私のエゴでそうします。
貴方が救われる一縷の望みがあるならば。
下から貴方の声が響く。
決して、そこから動くなと。
金属で出来たその建物は私の断罪場。
だから、もう遅いのよ。
そこに立った時点で私の罪は裁かれる。
嗚呼、さようなら。
愛しい我が最愛の魔人。
ひらりと一歩下界に足を伸ばせば身体が紙の様に軽々と中に舞った。
魔人がその魔の力を使い私を助けようとしているのが判る。
そうなる事を予感していた私はもう一つ手を打っていた。
その貴方の腕に抱かれた時、全ては露見する。
私が死んでも悲しまないで。
これが私の幸福だから。



魔人の腕に抱かれた私の胸には紅い紅い大輪の華が一つ。
(何故だ。何故、こんな事をした!?!!)
(嗚呼、貴方の涙が零れ落ちてくる。そこまで貴方は人に為り掛けていたのね。)