夜風に舞う紅い紅蓮の髪が目に入った。
以前とは違い短くなったその髪は微かに舞うのみ。
でも、とても綺麗だった。
私はここに来た理由を思い出してそっと彼の隣に立った。
I heard someone calling my name.
「どうしたの?こんな夜遅くに」
「!こそどうしてこんなとこに・・・」
とても驚いた素振りを見せるルークには曖昧な笑みを浮かべた。
「それはお互い様。で、何してたの?明日の事で緊張?」
「あ・・・うん。まあ、な」
曖昧に頷くルークを見たは怪訝に思ったが敢えてそれには触れなかった。
ただ、ルークの隣で夜空を見上げてその星々の瞬きを目で追った。
暫くといってもそんなに大した時間は経っていないががふとルークの髪に触れた。
「ルーク。あの頃と比べて色々変わったね。姿も心も。全部変わった」
「そっかな?まあ、あの頃の俺はあまりに世界を知らなかったしな・・・」
「それは仕方なかったよ。あんな狭い所に軟禁生活させられてたんだし」
がそう言うとルークは首を横に振り、夜空を見上げた。
「いや、俺は知ろうとなんかしてなかったんだ。
悲劇の主人公みたいにさ。自分の事しか考えてなくて。
だがら、俺、なんであの時からもっと色んな事知ろうとしなかったんだろうって
後悔ばっかりなんだ。馬鹿だよな。今更、後悔しても何にもなんないのにさ・・・」
「ルーク・・・ううん。そんな事ないよ。
その気持ちがあったから今のルークがいる。今のルークはとっても素敵だよ」
満面の笑みを浮かべてそう言った。
ルークは変わった。
それはとてもいい方向にそう本当に切実に思ったからはそう言ったのだ。
今までずっと傍で見てきたからわかる事。
今、ルークが打ち明けていない事だってなんとなくだがにはわかっているのだ。
「ありがとう。」
寂しげに笑ったルークを見ては核心へと迫った。
「ねぇ・・・ルーク。怖がったていいんだよ?本当の事言ってもいいんだよ?ルークは一人じゃないから」
「・・・?」
「ねぇ?ルーク。責任だとかそんなの感じて全部背負わなくてもいいんだよ?」
優しく、ただ果てしなく優しく。
海を撫でる漣のように優しく微笑むの姿にルークは涙が込み上げてくるのを感じた。
ああ、なんでこんなにも一番知られたくなかった人に気づかれてしまうのだろう。
「・・・ごめん!」
気づけばルークはを抱きしめていた。
この不安定に揺らぐ負の感情をぶつけるかのように。
明日になれば死ぬかも知れない。
いや、死ぬであろう自分が怖かったのだ。
前まではそんなことはなかった。
でも、始めてあのレムの塔で死に掛けた時。
あの時に感じた恐怖からルークはどうしても死を恐れていた。
折角、変われて、沢山の仲間ができて、大切な人もできた。
なのにどうして明日にはこの命が散ってしまうのだろう。
もっと傍にいたい。
もっと一緒にいて色々なものを感じて見て触れて生きていたい。
死にたくない。
けれど、時は待ってはくれないんだ。
「(そんな想いを抱いている俺に気づいているようにが問うから・・・俺・・・・)」
また、願ってしまう。
彼女の隣に居たいって。
そう、ルークが想った時。
ふと背中に何かが当たった。
腕だった。
の腕がしっかりとルークの背に回されていたのだ。
「大丈夫だよ。ルーク。私も一緒に行くから」
「え・・・?」
「一人にしないよ。最後まで傍にいるから。
ローレライを解放する時も私は隣にいるつもりだから」
その言葉にルークはをパッと離して肩を掴んだ。
「でも!それじゃあ、まで!!」
「いいんだよ。だってルークにばっかり背負わせたくない。それにこれは私が決めた事だから。私はルークの傍にいるよ」
「(嗚呼、どうしよう。涙が出そうだ。)」
ルークは下を向いてそう想った。
「ルーク・・・?」
その様子を怪訝そうにが見つめた。
するとルークは顔を上げた。
その表情は嬉しそうでそれでいて涙を堪える様な・・・
「バッカだなぁ・・・は・・・俺の為にそこまでしなくてもいいのに・・・」
「ルーク・・・」
「そんなこと言ったら・・・俺、から離れられないじゃん」
その言葉には笑顔を浮かべた。
「離れなくていいよ。それに私がきっと離さないから」
「俺だって離せないよ。後悔すんなよ!」
そういって涙を流しながら笑顔を浮かべるルークを見てはとても綺麗だと想った。
ただ、この人が喜んでくれるなら自分はこの身を捧げる事だって厭わない。
だって、愛しているから。
なんだってできる。
一人にはできないんだ。
もう、離れることはできないんだ。
ならずっと傍に居よう。
「しないよ。ルークこそしないでよ!」
「するわけないだろ!・・・・ありがとう。・・・・」
「・・・うん」
再びその腕に抱かれたはその身を委ねて頷いた。
「好きになってよかった・・・を」
「私もルークを好きになってよかった」
お互いを見合わせてそう言い合う二人は額を合わせて笑った。
そして、二人の唇がどちらからともなく重なる。
深く深くただ互いを感じるように。
唇が離れると一息ついてからが口を開いた。
「ねぇ?ルーク」
「ん?」
「本当は私ね。ルークに呼ばれた気がしてここに来たの」
その言葉にルークは目を丸くした。
「実は俺、の事ずっと考えてた。・・・伝わったのかな?」
「そう、かもね」
そう言い合ってふたりはクスリと笑った。
再びその体をルークに預けるとは静かに言った。
「ねぇ、ルーク。ずっと一緒だよ」
「ああ、ずっと一緒に。傍にいてほしい」
そして、再び重なった唇は誓いのように神聖な儀式のような口付け。
星空が瞬く中、永遠に続く漣の音が響く。
その漣はまるで二人を繋ぐ絆のように永遠に響く。
たとえ、二人のその命燃え尽きても。
(ずっと傍にいてこの身が果てても魂は永遠に。)
(ああ、永遠にそれならきっと死ぬ事だって怖くないから君となら。)
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