皆が掌を返したようにルークに対して冷たくなった。
確かに彼は取り返しのつかない事をしてしまった。
だからと言ってこうもあっさりと彼を見捨てれるものなのか。
これはあまりにも酷いのではないか。
それはあまりにも残酷すぎるのではありませんか?






貴方が孤独ならば








先程からムカムカと気持ち悪い。
繰り広げられるやり取りのせいだろう。
ルークを攻めるような蔑むような視線と言葉。
人はこんなにも残酷になれるものなのだと私は苛立ちを募らせていた。
ルークは確かに罪を犯した。
けれど、それは彼だけのせいではない。
それは誰もがわかる事だ。
ない事にしろとは言わない。
ただ、もう少し静かに見守ってやろうと思わないのだろうか。
嗚呼、腹立たしい。
そう思うと私はもう居ても立っても居られなくなった。
宿の中で繰り広げられる暗にルークを攻める空気と雰囲気を吹き飛ばすかの如く私は左手で思いっきり宿の壁を横叩きした。
ドンッ!!!っという大きな音とパラパラっと微かに落ちる木屑の音。
そして、先程までの話し声が静まり、私に視線が注がれる。
そこで私は瞳をキッっとさせて視線を前へと向ける。
案の定そこんは驚きに満ちた表情を浮かべる皆の顔。
そりゃあそうだろう。
異世界から飛ばされてきて皆と旅をするようになってこんなにも本気で怒ったのは初めてなのだから。

「合流してから黙ってたけど・・・いい加減にしたらどうなのかしら?」

今までにないぐらい低い声で告げると女性陣は微かに肩を揺らした。
だが、そんな事を気にせずに私は言葉を紡ぎ続ける。
私の隣にはルークが居てそのルークも驚いた顔をしていた。
でも、そんなルークを安心させるように少しだけルークの方を見て微かに笑うと
また厳しい表情に戻って他の面々に全ての想いを曝け出した。

「私、気に食わなかったの。幾らルークが大罪を犯したからと言って。
180度態度を変える皆が。そんなに簡単に人って態度を変えれるものなのね」

私が冷たくそう言い放つと少しムッとした表情でアニスが言い返そうとした。

「ちょ、ちょっと!だってそれは・・・」
「だから、言っているでしょ?ルークは確かに罪を犯した。けれど、それが全て彼だけの責任だというの?
それは間違いだわ。更に言ってみれば責任を感じ少しでも罪を償おうとしている彼に対してあまりに残酷だと思わないの?」

紡ぎ続ける言葉についにアニスも押し黙る。
自分自身の話でこんなことになっていることにルークが慌てたように駆け寄った。

!俺は、別に気にしてないし!!」
「私は気にするの。別にこれはルークの為とかじゃなくて厳密に言えば私自身の為。
見ていて嫌な気持ちになるのよ。
残酷すぎる人の醜悪な姿に。
誰もがその姿を持っているとはいえ。皆の今の態度はあまりにも酷いものがあるわ。人として疑うぐらいにね」

その言葉にルークも皆も押し黙る。
ただ、静寂が支配するその部屋の中。
私は髪を掻き揚げるともう一言だけ告げた。

「少し、皆も今ままでのルークに対する態度を考えてみて。で、ルークは私に少し付き合って頂戴。私が言いたい事は以上よ」

それだけ言うと私は隣に居るルークの手を取って部屋を後にした。
ルークが何か訴えていたが気にせずに外まで連れ出す。
そして、しばらく歩き宿から近い小高い丘につくと私はその場に腰を下ろした。
そんな私を見たままルークはまだ立ち続けている。

・・・ありがとう」
「お礼を言われる事じゃないわ。でも、貴方が久々に嬉しそうに笑ってくれたならよかった」

安心したように私がそう告げるとルークは恥ずかしげに隣に腰を下ろした。

「そ、そんなに俺。最近笑ってなかった?」
「そうね。何か作った笑いだったと思うわ」
「そっか・・・俺、実は結構参ってたんだ。
だから、本当にがああ言ってくれて嬉しかった。まだ、俺を大事に思ってくれてる人がいるんだって思えて」

はにかむようにそう笑ったルーク。
私はその顔が少し寂しげでなんだかとても切なくなった。
気付けば私はルークを抱き締めていた。

!?ど、どうかしたのか!?」

慌てふためくルークを尻目に私はただ告げる。

「違うよ。ただ、ルークを安心させたかったんだ。ルークの傍にはどんな事があっても私が居るからって。
私は何があったってルークと一緒に居るよ。世界の皆が敵に回ったって私はルークの傍でずっと支えてあげる」

・・・ありがとう。俺も、の傍にずっと居るよ」
「それは嬉しいわね。でも、なんだかそれ告白みたい」

あまりに嬉しい事を言ってくれた彼に冗談めかしてそう言うと。
ルークは耳まで真っ赤になって慌てふためき出した。

「いや!こ、告白って訳じゃ!あ、でも、の事が嫌いな訳じゃなくて!むしろ、好きで・・って本当に何いってんだ!?俺!」

混乱して支離滅裂な事を言っているルーク。
それが可笑しくて大声を出して笑うとルークは拗ねた様に頬を膨らませた。
そんな彼の頬に私は唇をそっと寄せるとキスを落とす。
すると、さらに顔が赤に染まっていって。
酸欠の金魚のように口をパクパクとしてこちらを見つめてきた。
そんな彼に私は告げた。

「私は愛してるわ。ルークの事。誰よりも」

だから、貴方の傍に居て貴方の味方でどんな時もあり続けるのだと。
驚き慌てふためく彼を他所に私は告げた。



(何度だって信じられるまで言って上げる愛している貴方の為なら全てを捧げてあげると。)
(だから、さっきも貴方を傷つける人々から貴方を守りたいという想いからの行動だったの。)