些細な事でどうしようもないぐらい動揺してしまったり。
それは自分ではどうしようもなくて。
でも、そんな些細な事が幸せ。
そんな日常を君がくれている。
重ね合わせる温度
「瑛。手出してみて。両手」
「は?いいけど・・・一体なんだよ?」
バイト開始間際に告げられた要求に戸惑いながらもとりあえず言われた通りに両手を差し出す。
はそれを見てそれぞれの掌に何か白いクリーム状のものをつけた。
「これって・・・」
「ハンドクリーム。最近、寒くなってきて水仕事とかしていると手が荒れるって言ってたでしょ?」
ハンドクリームの蓋を閉めてテーブルの上にコトリと静かに置くと自身も自分の両手にクリームを塗る。
「あ、ああ」
「だからハンドクリーム買って置いたんだ」
小さく漏らした何気ない一言だったのだがはそれを覚えていたらしい。
俺はそれにほんの少し気恥ずかしくも嬉しい気持ちを抱いた。
「瑛?」
返事を返す事を忘れて思考に耽っていた為に不思議そうにが首を傾げる。
それを見て慌てて俺は返事を返そうとするがどうにも気恥ずかしくて声が小さくなる。
小さな声で俺は顔を背けながらそっと口を開いた。
「あ・・いや、その・・・サンキュ。助かる」
はまたきょとんとした後に穏やかに優しく微笑む。
「どういたしまして。ほら、瑛もちゃんと塗り込まないと効かないよ?」
微笑みながら俺の両手を擦る。
柔らかな白い手が触れる度に
その触れた先から甘い痺れが全身に渡る。
それに慌てて俺は制止の声を掛けた。
「うわ!わ、わかったって!!自分でやるから!!」
そういって思わず彼女の両手を握ってしまった。
「「あ」」
互いに思わず驚きの声を上げてしまい
顔を紅くして固まってしまう。
「わ、悪い!!」
「う、ううん。ぜんぜん大丈夫だから!!」
互いに顔を紅くしながら心臓を落ち着けようと深呼吸をした。
若干不自然な笑顔を浮かべながら互いに見詰め合う。
「と、とりあえず仕事だ!!仕事!!」
「そ、そうだね!!頑張ろうね!!」
変に意気込みながら俺たちはホールに出ていったのだった。
少し潤った掌。
(おや、二人とも少し顔が赤いね?)
(そそそそんなことないって!!!)
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