たまたま衛士さんのオフが日曜日になり、久々に一日一緒に入れる事になった。
でも、デートに行くのも最近忙しかったから疲れているだろうしと思い、衛士さんの自宅でのんびりする事に。

「衛士さん。じゃあ、少しソファに掛けて待ってて下さいね」
「ああ・・・」

さて、叶絵ちゃん、弥子ちゃん。
私、頑張って出来る彼女アピールしてきます!






その男、少女ホリックにつき注意







そもそも事の発端は昨日に遡る。

「やった!明日は久々に一日衛士さんと一緒だ」
「へー!笹塚さん明日お休みなんだぁ。よかったね!ちゃん!明日は事務所も久々に休みだし」

意気揚々と昼間に唐突に来た衛士さんのメールを見て嬉々としていた私に叶絵ちゃんが唐突に告げた言葉が始まりだった。

「そういやの彼氏って超年上の刑事さんなんでしょ?それって気をつけないと別の女に持ってかれるわよ」
「「・・・ええ!?」」

恋愛経験豊富そうな叶絵ちゃんの言葉に私はさぁっと青褪める。
横で弥子ちゃんが大丈夫だよって励ましてくれるけど考えてみればそうだ。
十歳以上年下の私が恋人になれた事自体奇跡に近しいというのに何の努力もしなければ誰かに奪われてもおかしくない。
だって、仕事場の人の方が自然と私より一緒にいる時間は長い訳だし。
なってたって衛士さんは背が高くて、クールで格好いいし、フェミニストで優しくて非の打ち所がないというか。
あんな素敵な男の人に他の女が寄り付く可能性も否めない訳で。
よくよく考えてみればデートはしてるけどまだ、き、キスもした事ないし。
そう考えれば不安がざぁーっと過ぎっていく。

「ど、どうしよう!?叶絵ちゃん!!」
「落ち着きなさいって。会える時にちゃんと私はいい女なんだってアピールすればあんたなら大丈夫よ。
弥子は色気より食い気で多々問題あるけどは顔良し、頭良し、性格良しの三拍子が揃ってるんだから」
「うんうん!そうそう!!って叶絵ちゃんなんか私に対して酷くない!?」

私、そんなに褒められる様な凄い女じゃないんだけどな。
弥子ちゃんは可愛い系で誰にでも好かれるし、叶絵ちゃんは大人の魅力を感じるし。
それに比べたら私なんて微々たるもので男の人に告白されたのだって衛士さんが初めてだし。

「叶絵ちゃん。どうやってアピールすればいいかな!?」
「そうね・・・じゃあ、こういうのどう?」

そう言って提案されたのがこうだった。
さり気無い露出でお色気作戦!何気に料理も巧いのよ!だ。
っていうかこれ作戦名つけたの弥子ちゃんなんだけど、ちょっとセンスないと思うの。うん。
で、具体的に何をすればいいのかと聞いた所。
放課後、叶絵ちゃんと弥子ちゃんが私の家に乗り込んできて洋服から何から何までプロデュースしていった。
格好はさり気無い露出って事でもう大分暑いので黒のホルターネックのトップスに七分丈のボレロを重ねて下は白のミニタイトスカート。
そして、ニーハイソックスにアクセサリーはシルバーで揃えられ、髪形は長い髪を少し毛先だけ巻いてサイドに纏めた。
ちなみに何故か下着まで選ばれて(それも買いに行って。)
黒のレースのサテンの下着でアウターに響かない様に後ろは飾り紐になっており、フロントフォックのもの。
脱がす時に楽だからって・・・脱がすって何!?
そんな普段しないようなセクシーな格好をさせられたんだけど、これがまた背中が凄い開いててスースーするんだけど。
は、恥ずかしい・・・
それでそんな格好で後、何をすればいいのかなと思ったら意外にも手料理を振舞ってみればと言われたのだ。
重要なのはボレロを脱いでする事らしいけど。(背中が・・・恥ずかしい。)
叶絵ちゃん曰く「料理の巧い女にいい男はつき物!」らしい。
何だかそこだけ妙に力が入ってたのは過去に料理関係で恋愛失敗でもしたのだろうか?
と、とりあえずそれぐらいなら料理は得意だし何とかできるだろうと頑張って実行はしているけれど。
やっぱりこの格好は恥ずかしい!!
ついた時も珍しい格好だね?と聞かれたし!(友達にプレゼントされてって答えたけど。)
軽快な音を立てながら料理を進めるもどうにも照れ臭い。
そう思ってると急に背後からにゅっと手が伸びてきた。
唐突な事で驚いた私は肩を上下に揺らした。

「え、衛士さん!?」

これは、完全に抱きすくめられてますよね!?
あの、ええ!?
何事だと混乱しながらも抱きすくめられてるから料理も続行できないし、耳に掛かる吐息がくすぐったくて心臓壊れそうだし。
嗚呼、一体どうすれば!?
そう思っていると衛士さんがぼそりと呟いた。

・・・」
「は、はい!?」

普段ちゃん付けで呼ばれるのに呼び捨てで思わず声が上擦る。
するとひょいっと足が床から離れた。
それと共に襲い来る浮遊感。

「え?ええ!?」

何と私は衛士さんに横抱きにされてどこかに運ばれ出した。
益々理解できない状況に唖然としているとある部屋に入って行き、ゆっくりと優しく何かの上に降ろされた。
それはふわふわとした感触のもので。
えっと、これはその・・・もしかして?
何となく状況が理解できてきた私の上にぎしりとスプリングの軋む音を響かせながら衛士さんの顔がアップになる。
そこには普段の顔とは違う大人の男の人の顔があって。
仄かな色気と共に掠れた声が響いた。

「結構、我慢強い方なんだけど今回ばかりは無理だった」
「え・・・?・・・!?」

どういう事ですかと訊ねようとした瞬間唇が重なり合った。
それが、初めてのキスで初めてディープキスだった。
乱れる呼吸に何も考えれなくなってただ、私はなされるがままとなっていった。
嗚呼、弥子ちゃん、叶絵ちゃん。
作戦どころじゃなくなってしまったようです。
数時間後。
目覚めた私の目の前にはいつもの表情を浮かべた衛士さんの顔。
だけど、互いに一糸纏わぬ姿だと理解するとシーツで顔を隠して様子を伺う。
すると、優しく衛士さんが私の髪を梳いて微笑んだ。

「おはよう。
「おはよう、ございます。衛士、さん・・・」

撫でられる手の感触が心地よくて次第に緊張が解れていく。
そして、やっぱり普段の格好と違っていた私にそれを問いかけてきたので素直に顔を紅く染めながらも話した。
すると、「あー・・・なるほどね」と衛士さんは納得したように声を上げた。

「なら、その作戦はある意味成功だったよ」
「え・・・?」
「だって、俺、我慢できなくなっちゃたしね」

さらりとそんな事を告げるものだから私はまた顔を真っ赤にしてシーツに潜る。
そんな私を抱き寄せて笑いを漏らすと衛士さんはそっと囁いてくれた。

「大丈夫。そんな事しなくても俺はしか見えてないから」

嗚呼、本当に凄い殺し文句だ。
私はこくりと頷くと擦り寄るようにその胸に顔を近づけた。
不安など全て消えて、心地よい幸せと共に。



中毒にも似た溺愛加減。
(・・・ちゃん。)(はい?何でしょう・・・?)
(そう、擦り寄られると男として否応無く反応しちゃうんだけど・・・)(・・・っ!?)