君に出会って。
君を知って。
君を愛して。
君と新たな世界を見つけて。
僕は幸せになって、さらに幸せになっていく。






この愛おしい温もり







生まれてまもなくまるで物のように捨てられて不必要の烙印を押された僕。
そんな僕を深い闇から温かな柔らかい光の中に導いた。
彼女の優しさや愛情をこの身に受けて。
僕は次第に生きていてよいのだと思った。
そう、僕は彼女に出会う為に生まれてきたのだと知った。
生まれてきた意味を知ったのだ。

「シンク」

優しく、愛おしげに。
彼女がそう名前を呼ぶほどに。
からっぽの僕の中に何かが満ちてきて。
僕の左胸が熱くなる。

「ほら、トクトクって小さいけど確かな音が聞こえるんだ」

手を導かれて触れたその先に新たな生命の息吹を感じた。
そして、今僕の手の中には小さくそれでいて確かな鼓動の音を鳴らして
懸命に生きようとしているその小さな生命に僕は知らぬ間に涙を流した。
悲しくて流れたわけではない。
ただ、嬉しくて感動して涙が流れた。
その様子に彼女は微笑み告げた。

「無事に生まれてきてくれてよかった。ね?シンク」
「そうだね・・・ありがとう、生まれてきてくれて」

その手の中にある声を上げる命に僕はそっと口付けた。
そして、彼女に告げた。

「ありがとう。僕にまた幸せをくれて。
「私こそありがとう。この子に巡り合わせてくれて」

その声を聞いた途端、僕の中にいるその暖かな存在は穏やかな表情を見せた。
それに僕らはまた穏やかに微笑み肩を寄せてその命を見つめた。
僕が彼女を愛して。
彼女が僕を愛して。
互いが愛して生まれてきた。
何よりも尊く美しく愛おしい我が子を。
今度は僕にこの子も幸せをくれるのだろう。
だから、僕もこの子と愛した彼女にたくさんの幸せを返すのだ。

「名のない僕の子もも愛しているよ」


(世界を呪った過去さえも懐かしい思い出と思える程にこの時が幸せだった。)