学生と社会人。
その差を酷く感じてしまう時がある。
その度に年齢差なんてなければいいのにと思ってしまう。






経済能力格差に悩む







学生の一人暮らしというものは大変質素である。
何せ金がない。
だから、何に対しても節約の二文字が横切る。
仲間内からは主夫だとか言われるが現実問題必死なのだ。
だが、節約だとか言ってられない時もある。
それは、やはりデートの時とか。
相手は年上で更には俺の家庭事情にも詳しいからいつも全額結局払っていく。
俺としては男としてそれはどうだろうかと頭を悩ませるが財布から金が沸いてくる訳でもなく。
結局、その場の主導権を握られてしまう。
何と言うか複雑である。

「バイトを増やすにしてもだな・・・時間がこれ以上は無理だし」
「何をぶつぶつ言ってる・・・?瞬」

その声に漸くここが彼女であるの家なのだと思い出す。
どうやら今居る場所すら忘れる程考えに耽っていたらしい。
コーヒーを手渡されながら不思議そうに見つめられて恥かしくなる。

「い、いや、少し金銭的問題について考えていてな」

って何を素直に本当の事を告げてしまっているのだ俺と自分に突っ込む。
が、既に後悔したところできっちりと聞かれていた為誤魔化す事すらままならない。
彼女はふーん・・・と呟きながらコーヒーを一口飲み、改めて俺に問い返す。

「そんなに金銭的に困っているのか?」
「いや、日常生活は何とか事足りている。ただ・・・」
「ただ・・・?」

いや!だから俺は何流されるまま話そうとしているのだ!?
再びハッと我に返り何でもないと誤魔化す。
誤魔化されるとは到底思えないが。
その考えは当たっていて彼女はちゃんと言えと言わんばかりにこちらを見つめてくる。
一度も逸らす事なくじっと見られる事数分。
俺はその無言の訴えに耐えかねて静かに白状した。

「その、だな。デートに言ってもが殆ど費用を出すだろ?それが、その気になっていてだな」
「・・・そんな事を気にしてたの?」
「いや、気にするだろう。普通」

拍子抜けしたと言わんばかりにきょとんと此方を見つめる視線。
嗚呼、そう言われてみればこの人も何処か常識に欠けている所があったと思い出す。
特に恋愛に関しては殊更。
そう思いながらふと彼女を見ると何か考えているらしく無言でコーヒーをちびちびと飲む。
俺より年上だがどうにもそう言う可愛い仕草を無意識にするので困る。
こう、何と言うか心臓が高鳴り、思わず抱きしめたくなるというか。
悶々とそういう思考が膨らんでいき、ハッと我に返りその考えを払う。
俗物だな大概と自分に呆れながら目の前の彼女を見てみるとふと何かを思いついたようにカップを置いた。

「なら、日常生活で使うお金を減らせればいいの?」
「まあ、それが一番手っ取り早いだろうな」
「ふーん・・・なら、ここで暮らせば?」

さらりと何か凄い事を告げられた気がする。
俺は思わず固まり、何度も脳内で彼女の言葉を反復させる。
そして、言葉の意味を理解すると思わず立ち上がった。

「い、言ってる意味判っているのか!?」
「だから、一緒に住めばって」
「いや、だから!?ああ・・・わかった。言っても無駄だったな」

どうせ深く考えていないのだ。
彼女は。
一度心を許すと何でも許す人だから。
自己納得すると再びソファに座り直した。

「で?どうする?」
「どうするって・・・」
「・・・嫌?」
「嫌じゃないが迷惑じゃないか?」
「迷惑なら言わない」

そう言われてみればそうだ。
この人は嫌な事は申し出ない。
俺は暫く考える。
そう簡単に決めていい問題でもないと思うから。
だけど、じっと見つめられる返事に俺は耐えられなくなり了承の返事をした。
その時、彼女が珍しく嬉しげに微笑んだのに驚く事となったが。
結局、その週の内に本当に彼女の家に引越してしまった俺だったがそこで新たな悩みが増えるのは言うまでもなかった。

「だから、生活費は俺も払う」
「いらない。瞬は学生だから何かと金銭が必要でしょう」
「でも、それでは結局俺の生活全て貴女の面倒になるみたいで気に喰わん」

そう、生活費の一切合切をに払ってもらう事になってしまったのだ。
それもどうなんだ俺と思って言ってみたがどうにも折れてくれない。
が、俺も早々折れる訳にもいかない。
そう、これはプライドの問題なんだ。

「気にしなくていい」
「そうもいかないと言っているだろう」
「・・・」

何度も反論しているとは急に黙りこくってこちらをじっと見つめてきた。

「な、なんだ?」

急に無言になられて見つめられれば嫌でも気になる。
しかし、彼女は何も言わずにずっと見つめてくる。
これは、無言の圧力なのだろうか。
思わず視線を外したくなるのを耐えて負けじと見つめ返す。
すると、急にふわりと笑ったに俺は思わず顔を紅く染める。

「今は私が払って瞬が大学卒業して稼ぎ出したら全部面倒見てもらう」
「・・・それはつまり?」
「お婿さんになるまでは私が払う」
「なっ!?」

思い掛けない言葉に俺は顔を真っ赤に染め上げる。
先程以上の衝撃に胸は大きく高鳴り続ける。

「花嫁になれる日、楽しみにしてる」

一番愛している人にそこまで言われれば反論する事なんて出来ずにただ顔を紅く染めるだけであった。
嗚呼、本当に経済的にも恋愛的にも勝てない人である。



彼女を花嫁にするその日まで経済的主導権は奪えない。
(本気で、花嫁に貰うからなっ!)
(顔、真っ赤。)