美しく穢れを知らない彼女を汚したいという願望。
そんな浅ましい欲望を隠して、今日も俺は彼女の傍に居る。
いつかこの手で侵し尽くす日を夢見て。
花を手折る夢に魅了される少年
例えば今、目の前にある彼女のその白磁の肌に触れたい。
更には所有痕を残したい等という欲求は愛しければ自然と沸き上がる衝動であり、男ならば多分、誰でもそうだと思うのだ。
それを理性という鎖で日常的には留めているに過ぎない。
その鎖が焼き切れた時、男は衝動に身を任せるのだと思う。
そう、今の俺の様に。
「東堂・・・?」
彼女はとても不思議そうに俺の名を呼んだ。
現在進行形で寮の俺の自室で組み敷かれているというのに何も知らぬ無垢な瞳を向けて。
それすらも今の俺にはこの胸に荒ぶる情欲を刺激するものでしかなかった。
捕らえている右手首から感じる絹の様な肌触りが酷く心地いい。
その心地よさに目を細めて、思わず恍惚としてしまいながらも彼女に向けて俺は言葉を紡ぐ。
「俺とて男だとお前は解っているのか?。こんな密室で無防備にされては俺とて我慢できんぞ?」
出た声は普段よりも低く、彼女は驚きの色を映す瞳を向けた。
ただ、不思議とそこに恐怖という感情は見えていない。
不思議だという思考が脳裏に過ぎるもそれよりも目の前に据えられた膳に目が行く。
獣のような本能が今はどうしても優先されているから俺は彼女が纏う雰囲気の変化に気付かなかった。
すっと抑えている手とは逆の彼女の手が伸ばされ、俺の頬を柔らかく撫ぜる。
そして、柔らかな微笑を浮かべて、彼女は問うた。
「・・・・どうしたいの?」
「え・・・?」
幼い子供に問うように優しい声色が耳に届き、今度は俺が目を見開く番だった。
正直、もう少し頬を赤らめて羞恥するとかそういうのを想像していた俺には本当に予想外の展開だったのだ。
彼女はそんな俺の愚かしい決めつけすらも見通していたかのように再度尋ねた。
「ねえ、どうしたい?東堂」
本当は分かっているけど、なんていう言葉が含まれていそうな彼女の言葉。
不思議と有無を言わさぬ力があるような気がして、俺は誘われるままに絞り出すように欲を紡ぐ。
「誰も知らないお前の全てを暴きたい。触れて、侵して、俺だけのお前を見せて欲しい」
真っ直ぐに見つめて迷いなく言うと俺の頬に触れる彼女の手をとって口付けた。
彼女はそんな俺の行為と言葉を見届けるとその微笑みに艶やかな色を添える。
「いいよ。東堂になら全部見せてあげる」
それは俺の引き金を引くには充分過ぎる一言だった。
唇を食み、深く重ねて、舌を絡めて、激しく貪る。
息が乱れて、頬が上気するのも気にせずにキスを終えれば、その首筋に舌を這わせた。
白く穢れのないその肌に触れる自身の舌先が首筋から静かに鎖骨に。
動く度に軋むスプリングの音すら熱を上げる材料になった。
か細い彼女の欲に塗れた吐息が更に行為を激しくさせる。
と、思った瞬間、急に電子音が響き渡った。
「っっ!?」
ばっと視界が一転したなと思うと俺はベッドの中で朝を知らせる様に外では鳥が鳴き声を上げてた。
隣には電子音を響かせる携帯が無常にベルを響かせている。
俺は無言で寝たまま携帯を掴むとアラームを消して、項垂れる。
「俺は、中学生かっ・・・!」
彼女と関係を深められずにここ最近、悶々としていた事は認めるがこんな夢を見るなんて恥ずかしいにも程がある。
更には夢ですら攻めきれず、最終的に彼女に促されて事に及ぶとは男としてどうなのだ。
顔を覆いながら襲い来る羞恥に悶えているとそこで追い討ちをかけるように下半身に違和感を感じた。
嗚呼、もういっそ誰か殺してくれと思う程、欲求不満な自分が憎い。
その後、朝一にいつもと変わらぬ愛らしい笑顔で迎えてくれた彼女を思いっきり抱き締めてしまう事になるのは致し方ない事だと思う。
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