「またかよ!ダメツナ〜!」
「ご、ごめんっ・・・」

そういって謝る君を見た時、不思議で仕方なかった。
罪は君にはない。
誰もが強いというわけではない。
君は弱くてもいいのだと教えてあげたいと思った。
だって、君の弱さは優しさゆえ。






君の弱さを愛す







「じゃあ、片付け頼んだぜ?」
「ええっ!?」

聞き覚えのある声を聞いて私はふとそこに視線を移す。
どうやら体育の授業を終えた一年の男子らしい。
ありがちな光景だと思ったがその中の一人に興味を持っている人物がいた。
沢田綱吉だ。
うん、やっぱりそうだ。
納得したところで丁度いい機会だと思ってそのままその騒ぎの中心へと向かった。

「い、いくらなんでもこれを全部一人で片付けるのは無理だよ・・・」
「なら、十代目!俺も手伝うッス!」
「で、でも、獄寺くんのチームは勝ったし・・・」

そんなやり取りが聞こえた所で私は彼らに声をかけた。

「沢田綱吉、だよね?」

私の声に一同の視線が私に集まる。
そして、一瞬でざわめきが起こる。
まあ、それも仕方ない事だろう。
私は並盛中の風紀委員長である雲雀恭弥の双子の姉であり。
そして、風紀委員長代理という役職についているからだ。

「あ、貴方は・・・?」

遠慮がちに聞いてくる沢田綱吉を置いといて
とりあえず群れている集団がうざくなり一声かけた。

「ねぇ?君たち」
「は、はいぃ!?」
「ここの片付け任してもいいよね?」
「で、でも・・・」

言い淀む彼らに私は苛立ちを覚える。

「何?文句でもあるの?なら、仕方ないね・・・咬み殺そうか」

それと同時に足に隠していたトンファーを構えると
流石に殴られたくはなかったのか「片付けますーーー!」と言いながら体育用具を運んで消え去った。
残ったのは沢田綱吉と確かその友人の獄寺隼人と山本武だ。
沢田綱吉はおどおどした表情でこちらを伺っているが残りの二人は敵意剥き出しだ。
ただ、女だからという理由か少し困惑した様子だが。

「さてと・・・あのさ、獄寺隼人と山本武。君たちには用はないんだよね」
「なら十代目にはなんのようがあるってんだよ・・・」
「そうだな。風紀委員がツナになんのようだ?」

どうやら恭弥との一件もあり、あまり風紀委員はいい印象がないらしい。
それだけではないのはすぐわかるが。

「別に話がしたいだけだけど?君に興味があってね。沢田綱吉」
「ぼ、僕?」
「そう、君。ああ、自己紹介が遅れたね。私は雲雀
雲雀恭弥の双子の姉で並盛中風紀委員長代理。でいいよ。よろしく」

それだけを言うと一瞬の間をおいて彼らが声を上げて驚いた。

「なっ!?てめぇが雲雀恭弥の双子の姉だと!?」
「うるさいなぁ・・・さっきからそう言ってるじゃないか」
「ヒバリさんに双子のお姉さんが居たなんて・・・」

普通なら知ってると思うだけどね。
君たちは少し知らなさ過ぎるだけだよ。

「で、話がしたいんだけどいいかな?まあ、拒否するなら・・・こちらも考えるけど」

チャキッという音と共にトンファーを構えると
沢田綱吉は青ざめて「もちろん構いません!」と頷いた。

「十代目!?こんな奴と話す必要なんてないっすよ!?」
「ツナ、本当にいいのか?」

二人が心配をしてそう聞くがどうやら二人を巻き込みたくない様で「大丈夫だよ」と笑ってみせた。
嗚呼、やっぱりこの子は優しい子だなと思ってしまう。
私は恭弥ほど他人を嫌わないし、別に戦うのが好きなわけじゃない。
ただ、どうも風紀委員をやっているとどうしても喧嘩を売られるのだ。
その為、一応武器を常備してるのだが。
それがどうやら怖がらせたり、警戒されたりする原因になってるみたいだ。
まあ、それはいいとして。

「ねぇ?別に私は喧嘩を売ろうってわけじゃないんだよ?
純粋に君に興味があるだけだし。まあ、印象が悪いのは恭弥のせいだろうけど」

話しながら一歩一歩トンファーを直して近づく。
そして、彼のまん前まで来て彼の頬に手を当てる。

「うん。やっぱり君は優しい子だね」
「え?えーっと・・・あ、あの・・・?」

困惑する沢田綱吉を見て私はそっと彼の唇に口付けを落とした。

「「「・・・・!?」」」

見ていた二人とされた本人は驚き目を丸くしている。

「やっぱり君の事、気に入ったよ」
「ええっ!?あ、え!?はっ!?」
「あはははっ!本当におもしろいね。君が好きだと言ってるのに」

笑いを浮かべてそう言ってやるとようやく状況を理解したらしく彼は顔を赤面させた。

「うん。今日は君のその顔が見れたから満足かな?じゃあ、またね。沢田綱吉」

それだけを言い残すと呆けている三人を放ってその場を後にした。
やっぱりあの子、気に入った。
あの弱さが。
だって、あの身を破滅させるほどの優しさがとても愛おしいのだもの。
さて、これからどうやって彼を自分のものにしてやろうか。
そう考えるだけでゾクゾクしなが応接室へと向かった。



(きっと今の私の表情はにやけていて恭弥が見たら気持ち悪いとか言うのだろうな)