※十年後捏造設定です。


、お邪魔するよ?」

朗らかな笑顔と共に声を掛けられて私は思考の海から上がる。

「これは、ボンゴレ十代目殿。妾の元に来るとは珍しき事。執務から逃げ出してこられたな?」
「うん?ナイショ」
「ふふ。まあ、一時ならばよろしかろう。ごゆるりとしていかれるがよい。今、茶でも出そうぞ」






白百合を手に共に溶け逝こう







「うん。やっぱりが入れるお茶は美味しいね」
「それはありがたき御言葉。しかし、妾の結界を容易く超えて来られるな。十代目殿は」
「とか言いながら俺だけが入れる様にしてくれてるくせに」
「はて?何の事か」

くすりと微笑して交わし、自ら入れたお茶を啜る。
自分の銀の髪が単を伝って落ちていく。
さらさらと。

「でも、は変わったよね。見た目が」
「それは仕方なき事。覚醒し、贄人となった妾は常に白の装束を纏いその力を高める。
それが贄人となりし、巫女の宿命。妾は自ら望んでなったので後悔はないがな」

ただ、自らの心に正直に答えると十代目殿は嬉しげに笑って妾の傍に近寄った。
そして、妾の銀色の髪を一房取り、指に絡める。

「それって俺の為だと思っていいのかな?」
「どうぞ。十代目殿がそう望まれるならば。妾は既に十代目殿のもの故に」

瞳をそっと伏せて告げれば掠めるようにさらりと唇を奪う十代目殿。
考えてみればこの人が一番変わったのだと思うのだが。
それも、あの最強の家庭教師の力故だろう。
そんな事をふと思いながら瞳を開ける。
すると、十代目殿は妾の膝の上に寝そべってきた。

「これ。十代目殿。茶を飲んでいる時に行儀が良うない」
「いいじゃない。たまには」
「ふぅ・・・仕方なき人だ事。で、今日は本当は何用で参った?聞きたき事があるのであろう?」

妾のその言葉に十代目殿はクスクスと笑った。
それに妾は紅い瞳をきょとんとさせて十代目殿に見入る。
すると、十代目殿は瞳をすっと開けた。

「本当にには叶わないな。何で、俺の考えてる事がそうも簡単にわかっちゃうかな?」
「貴方と妾は深き絆で結ばれている故」
「それは影武者としての?」
「どう取って貰っても構いませぬ」

そう言うと十代目殿は「じゃあ、愛の方で」と呟く。
全く、変なところまであの家庭教師の影響が出ていると思わず頭痛を覚える。
しかし、それも束の間のことで十代目殿が呟かれた次の言葉に妾は身を凍らせた。

「で、俺が死ぬまで後どれぐらい時間は残されてるのかな?」
「・・・何を仰られる?」
「・・・嘘をついてはダメだよ。わかってるんでしょ?」
「後、三週間あまり」

有無を言わさぬ瞳で見つめられて妾は瞳を伏せると真実を語る。
未来を見通すその力で見た十代目殿の過去。
これを知りえたのはやはりブラット・オブ・ボンゴレによるものであろう。
ならば、隠したところで無駄な話である。
なので素直に話したのだが彼は顔色変えずに笑ったままだった。

「そっか。案外早いものだね」
「十代目殿・・・」
「いいんだよ。わかってたから。それに、その場にはも一緒に居てくれるんだろ?」

嗚呼、そんなところまでわかっていたのかと私は困った表情を浮かべる。

「妾は贄ゆえに」
「それでもいいよ。が傍にいるのなら。と一緒に死ねるならそれはそれで幸せかもしれないしね」
「妾は・・・死んで欲しくはない」
「それでも未来は変えてはいけない」

その言葉に私はぐっと言葉を詰まらせる。
そして、瞳を伏せて込み上げてくる何かを堪える。

。泣かないで。俺は幸せだから」
「十代目殿・・・」
「俺は後悔なんてない。が最後まで傍に居るならそれでいい。他に望むものなんてない。俺が一番欲するものはだから」
「妾は十代目殿の意思を尊重する」
「うん。わかってる」

ついに流れ出した雫はポタポタと流れ落ちる。
十代目殿はそんな妾を引き寄せて抱きとめる。
上に寝そべる形になりながら私は次第にその胸に体の全てを預けた。
ただ、無音がその場を支配する。
それを、一度十代目殿が破った。

。俺はを愛してるよ。誰よりも何よりも。
ただ、一つ死ぬ事で後悔する事があるとしたら。を守れずに死ぬ事だ。でも、俺もすぐに行くから待っててね?」
「貴方の・・・望むままに」

それから三週間後。
妾は十代目殿より先に贄の契約により死した。
死に逝く瞬間に十代目殿は笑って無言で告げられた。
「すぐに行くから」と。
嗚呼、どうか未来など覆って貴方だけでも生きてくれればと死する中、思った。
でも、その後、貴方はやはり妾の上に折り重なって、共に死に逝く事となるのだった。



(白百合の咲くその場で妾は貴方の色と混じり逝った。)