「。最近、本当に気持ち悪い」
「ん?失礼だな。恭弥。仮にも私は姉なんだけど」
「それでも気持ち悪い」
はっきりと双子の弟にそう言われた。
まあ、そう言われる事は分かりきっていたしいいのだけれど。
だって、今は毎日が楽し過ぎるのだ。
続・君の弱さを愛す
「やぁ、おはよう。沢田綱吉」
見慣れた後ろ姿にそう告げれば肩がぴくりと動いてゆっくりと彼は振り返った。
「お、おはようございます!!さん」
「うん。元気そうだね。さて、じゃあ、行こうか」
どこに行くかなど告げずにそのまま肩に掛けた学ランを翻し沢田綱吉の腕を掴む。
そして、足早に歩みを進めていく。
困惑した彼は何やら声を上げていたが特に気にも留めず進む。
しばらくして私たちは屋上へと出た。
青々とした朝の空が視界一杯に広がる。
空気もどこか澄んでいるような錯覚すら覚える程に。
私は、そのまましばらく進むと程よく日陰になっている場所を見つけてその場に座る。
もちろん彼の手を引いて彼も座らせた。
「あ、あの!さん!俺、授業がっ・・・」
不安げに私の顔を見て尋ねてくる彼に
安心させるように笑みを浮かべて告げる。
「それなら心配ないよ。出席にしておくように手を回してあるから」
「なんでもありなんですか!?風紀委員って!?」
驚き目を丸くする彼。
それを見て私はくすくすと笑うとポンっと彼の頭に手を置いて軽く撫でる。
「うん。何でもありだから。今日は私と一緒に屋上でゆっくりするんだ。いいね?じゃないと咬み殺すから」
「ひぃー!!わ、わかりましたぁああ!」
慌ててそう告げる彼の顔は何処か赤く染まっていて。
嗚呼、可愛いなぁ。
なんて思いながらそれを楽しんだ。
最近、彼はあまり怖がらなくなった。
といっても前よりはって事だけど。
そもそも恭弥が悪いんだ。
変な恐怖感を風紀委員というレッテルに植えつけているのだから。
全く巻き込まれるこちらの身にもなって欲しい。
まぁ、それを上手く利用できるところは感謝するが。
「そういえば・・・一つ聞いていいですか?」
「ん?なんだい?」
遠慮がちに珍しく私に問いを投げかけてきた
彼に私はきょとんとしながら聞き入った。
すると、彼はもの凄い勢いでこれでもかってぐらい顔を赤く染めて小さな声で何かを呟いた。
「・・・ぁ・・・ぃ・・・った・・・か?」
「ん?聞こえづらかったんだ。もう一回言ってごらん」
優しく尋ね返すと彼はすぅーっと息を吸い込んで勢いよく告げた。
「その・・・・何故俺なんかの事好きになったんですか!?」
あまりの大声にしばらく音が響き木霊する。
私はぽかんっと口を開いて彼を見た。
彼は恥ずかしいのがぎゅっと瞳を閉じているばかりだ。
・・・ああ、私が男で彼が女だったのならば迷わず押し倒していただろうな。
そんな事が脳裏に過ぎりつつも取り敢えずこのまま放置は余りに可哀想なのでゆっくりと口を開いた。
「最初は偶然見かけた君のあまりの弱さを目の当たりにして湧き出した知的好奇心だった」
「え・・・?」
疑問符を浮かべる彼を見て私はにっこり微笑み続けた。
「それから暫く恭弥と戦っているのを見て気付いた。君は大切にしたいんだ。どんな人も傷つかぬように。その為に身を犠牲にする」
「俺は・・・そんなたいそうな事・・・」
「していないと思っているのも無理はないだろう。あれは君の潜在的なもの。無意識によるものだろうから」
「さん・・・」
あまりに嬉しげに切なげに名前を呼ぶ彼に私のブレーキは完全に壊れた。
そのまま頬に手を添えて唇を重ねる。
そして、そのまま歯列を割り、舌でその口内を蹂躙する。
しばらくして唇を離す互いに息を乱しながら見詰め合う。
彼は大分困惑しているらしく顔を赤くしながら少し瞳を潤ませる。
「ああ、本当に君はいい子で可愛いね。今日はここまでだよ
また遊びに来て上げるから。それまで、誰にもその心を明け渡すんじゃないよ」
私は額に軽い口付けをしてその場を後にしようと屋上のドアノブを捻った。
そして、扉が閉まる音が響こうとしたその途端、彼は叫んだ。
「さん!まだ、恋愛とかってよくわかんないけど。俺の事好きだって言ってくれてありがとうございます!」
そんな声が私の耳に届いて私は思わず振り返った。
しかし、扉は無常にも閉まりきってしまい、再び開く事は躊躇われた。
私は楽しげに笑うと階段を下りていく。
規則ただしい音が響く中、ほくそ笑み、優越に浸る。
「ああ、本当に君は・・・夢中にさせてくれるね」
気付いているだろか?
君を手に入れると言った私が既に君の虜だということを。
(きっとこのままの顔でいけば恭弥は今までにない位嫌な顔を浮かべるのだろうな。)
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