「好きだよ。君が」

思わず口にした言葉。
もう、想いは秘める事も出来ず。
ただ、溢れ出すだけだったんだ。






貴方を愛おしいと言えたら







「何を、言ってるんですか?」

開口一番に彼女はそう告げた。
表情など浮かべずにただ淡々と。
だから、俺はもう一度告げた。
もう、恥じらいなんてない。
あるのは貪欲にも君を求める欲だけだ。

「俺はが好きなんだ」

さっきよりも少し大きな声で聞こえなかったとは言わせないように耳元で告げた。
すると、彼女は立ち上がった。
俺から逃げるかのように。
そして、この部屋を後にしようとする。
慌ててそんな彼女の腕を引っ張った。
逃がすまいと。
彼女はそんな俺に振り向いて淡々と告げた。
それは、残酷過ぎる言葉。

「山崎さん。私は・・・貴方を愛せない」

そう、告げた。
あまりの衝撃にしばらく固まった。
けれど、けれど、俺は気づいてしまったんだ。
君の瞳に隠れている悲哀を。
ああ、ごめんね?
俺がもし、監察なんかじゃなかったら騙せたろうに。

「君は・・・何故嘘をつく?」
「私は、嘘をついた覚えはありません」
「なら、何故そんなに悲しそうなの?」

追及していく俺はなんて醜いのだろうか。
> でも、そんなことはどうだっていいんだ。
君の本音が聞きたいのだから。
君を手に入れる為に君の本音を聞きたいのだから。
だから、だから俺は追及することをやめるつもりもない。
好きでいる事をやめない。
君が本当に心から俺を嫌いになるまでは。

「悲しく、なんてありません・・・」
「嘘だ。なら、なんでそんなに辛そうなんだい?」
「辛く、なんかない。辛くなんてありません!!」

彼女はそう言って腕にあった俺の手を振り払った。
けれど、俺はそんな彼女を後ろから抱き寄せた。
仄かに甘い花のような香りが漂い鼻腔を擽る。

「駄目・・・」
「何が?」
「お願いです・・・行かせてください」
「できない。行かせたら君はもう俺の言葉など聞かないでしょ?」

俺のその言葉を最後に彼女は言葉を紡ぐのをやめた。
後ろに居る為、表情を伺う事はできない。
ねぇ?今、君は何を考えて何を思っているの?
教えて、教えて。
君が愛せないと言った理由も何もかも。
君の心の内を全て曝け出して。
そう、願う。
すると、その思いが通じたのか彼女がそっと唇を開き紡ぐ。

「何故ですか・・・何故、私なんですか?」
「好きになるのに理由はいるかい?君の全てが愛おしい。ただ、それだけなんだ」
「そんな事を言われたら・・・私は貴方を好きだと告げたくなります」

彼女はそっとそう告げた。
微かに震えているのは苦しんでいるからなのかな。
俺はそんな彼女を癒すようにそっとそっと正面を向いて抱きしめた。

「何故・・・そう言ってはくれないの?何か理由があるの?」

俺はひたすら優しくそう問いかけた。
すると、彼女は何度か言おうとして唇を開いては閉じてそれを繰り返す。
そして、最後に意を決したように手を強く握り締めた。

「私は・・・子供が生めません。そんな、女を愛することができますか?」

顔を見上げて涙を流して言う君に俺は目を丸くした。
だけど、次には優しく微笑んでその涙を唇で掬い取った。

「愛せるよ。だって、子供が生めなくても君がいる。今の君が俺の傍に居て笑って幸せでいてくれるならそれで十分だから」

そう告げた途端、彼女は壊れそうなぐらい声をあげて泣いた。
そんな彼女を抱きとめてあやしながら俺は思った。
彼女は幾度、自分には子供が生めない。
人を愛してはいけない。
そう思って涙を流したのだろうと。
でも、もう、苦しめたり悲しめたりしない。
一人では絶対に。
だから、もう一度俺は告げた。

「俺はを愛してる」

君は泣き腫らした目で僕を見上げた。
そして、震える唇でゆっくりと紡ぐ。
もう、隠す事のない本心を。

「私も・・・山崎さんを愛してますっ・・・」



(貪欲なまでの青年の愛が苦しみ続け悲しみ続ける少女を救ったお話。)