まどろみの中、意識がはっきりしないながらも辺りを見回す。
辺りを赤く、夕暮れが包んでいた。
そして、薄っすらとその赤色の間から紫暗の色が見えた。






赤い夕日







「柚木先輩?」

そう、自分の隣に驚くような人が髪を靡かせて眠りについていたのだ。
柚木梓馬。
音楽科の三年で専攻はフルート。
私が参加している音楽コンクールに出場している。
ちなみに私は普通科からの参加。
私の他に普通科からの参加は日野香穂子、土浦梁太郎の二人。
私はその香穂子ちゃんと同じバイオリンで参加している。
話は逸れたが柚木先輩といえばとても有名人。
だって、ファンクラブまである凄い人気の人だから。
私はあんまり喋った事もないから余計遠い人に見える。

「って・・・そんな事考えてる場合じゃないな。柚木先輩!こんなとこで寝てたら風邪引きますよ!」
「・・・・・・」

反応なし。
どうしたものかと思いながらももう一度揺さぶって見る。

「柚木先輩!風邪引きますって!!」
「んっ・・・・?」
「あ、はい。・・・って・・・え?」

今、って・・・・
あの上品で気品溢れるとまで言われてる柚木先輩がって呼び捨てにしたよね!?
私がちょっと混乱をしていると柚木は自分の失態に気づいたようだった。

「・・・ついににもバレたか俺の本性」
「え?」

するとは視界が反転した。
は起き上がった柚木にそのまま両手を押さえられて押し倒されたのである。

「あの・・・柚木先輩?」
「今のこと秘密にしておいた方が身の為だぜ?
まあ、他の奴に言っても誰も信じちゃくれないだろうがな。混乱していて理解できないか?」
「あ・・・いえ・・・なんとなくわかったような・・・・」

迫力に圧されながらも曖昧にそう返事をすると満足そうな笑みを浮かべ柚木。

「そうか。ならいい」
「あの・・・それとこの体勢はどういう関係が・・・・・」

すると、柚木は愉快だと言わんばかりに笑った。

「くくっ。気にしなくていい。もう一つ聞いておこうか。俺のこの本性を知ってもお前は怖がらないのか?」
「怖がるも何も・・・そんな理由ないじゃないですか・・・」

は何でそんな事を聞くのかという表情で柚木を見た。

「くくっ。そうか。それなら尚良い。お前、気に入った。俺のものになれよ」
「へ?」

そう柚木が言い、が疑問の声を上げるや否や柚木の唇がの唇に合わせられた。
は理解できぬままされるままとなった。
しばらくして柚木が唇を離し、立ち上がった。

「まあ、これから覚悟しておくんだね。絶対にお前は俺のものになる。じゃあな」

そういって柚木はその場を後にした。

は暫くして漸く言葉の意味を理解して顔を赤く染めた。

「えええ!!!??」

去った柚木は一人呟いた。

「寝ている姿に見惚れて隣で寝てしまったなんていえるわけないだろう」

偶然はちょっとした神様の悪戯。
夕暮れのちょっとした出来事。