あれから何年もの月日が経って私達は家族になった。
何年もの年月の間に様々な事があったけれどもそれでも私たちは互いの手を離さなかった。
色んなもの手に入れて、色んなものを失くして、色んな人と出会って、色んな人と別れて。
全てを経ても変わらなかったのは互いに離さなかったその手だけだった。
Epilogue:Endless story.
青空と青海と澄み切った空気。
鮮やかな青が広がったその世界で私は隣に居た彼に微笑んだ。
「綺麗だね」
「気に入った?」
「うん。でも、いつの間にこんなプライベートビーチなんか購入してたの?」
首を傾げて問えば昔と変わらない無邪気な笑顔で答える彼。
「この間、が海に行きたいなぁって言ってたの思い出して衝動買いしちゃった」
「衝動買い・・・そのレベルが年収上がる毎に凄くなってるから怖い。
それにしても私の為にじゃなくて自分の為に何か買えばいいのにシンの衝動買いは私の為ばかりなんだから」
"シン"と呼び始めたのは結婚してからなのだが今だに照れ臭い。
恋人になった以降もずっと名前にちゃんをつけて呼んでいたものだから余計に。
だけど、シンが唯一結婚する際に願った事だし、照れよりも彼の気持ちの為にそう呼ぶ。
昔は可愛さの方が勝っていた容姿も今やかっこいいの一言に尽きるし、随分色々変わった。
それでも変わらないその無邪気さや私に向けられる愛情や想いを感じながら私はそっと彼の肩により掛かる。
すると、額に軽い口付けを落とし、シンは笑った。
「だって、が喜ぶ顔が見たいんだもん。そう考えるとの為ばかりでもないでしょ?」
「そ、それは如何反応していいか迷うわ」
「うーん。笑顔で喜んでくれると嬉しいなぁ」
照れる私を余所にそのままそっと頬を両手で包み優しく口づけるシン。
「んっ・・・」
微かに漏れる甘い吐息が耳を侵し、脳髄に響き渡る。
深く交わされるキスに呼吸が苦しくなりシンの衣服をきゅっと掴めば唇が離れる。
鼻先が触れ合うぐらいのその距離でシンは嬉しげに幸せの色で
一杯な笑顔を浮かべると私の肩口に顔を埋めて強く抱き締めてきた。
それに応える様に背に私も手を回し、抱き締め返す。
「に出逢えて本当に良かった。会えてなかったらこんな幸せを感じる事もなかったかもしれない」
「それは私だってそうだよ。シンに出逢えて本当によかった」
漣の音を聞きながら互いに交わす言葉は聞こえるその音に似て優しかった。
「そうだ。私ね。今までの事を全て本に纏めようと思うんだ」
「本?どんな事を書くの?」
「シンとの事もそうだけどあの頃の皆との事、思い出を全部詰めて書くつもり。
時間はとても掛かると思うし、出版するかどうかも判らないけど形に残したくて」
大切な思い出をどうしても形にしておきたいと以前から思っていた。
あんなにも輝いていた日々を、奇跡の様な幸福な日々を鮮明に思い返せる様に。
「そっか。いいんじゃない。それ。僕にも手伝える事があったら言って」
「うん。ありがとう」
「別に御礼を言われる程でもないよ。ね、。話はそれ位にして折角だから泳ごうよ」
立ち上がって着ていたパーカーを脱ぐとそう私に手を差し伸べた。
私も上に羽織っていた上着を脱いで笑ってその手を取った。
互いの手にある結婚指輪がきらりと太陽の光りにより瞬く。
「そうだね。折角来たんだから泳いで楽しんで新しい思い出作らないとね」
「そうそう。じゃあ、行こうか」
「うん」
二人で手を繋ぎ、海へと向かう。
しっかりと繋がれた手は互いの絆の様に固く私達を結んでいた。
きっと私達はこれからも一緒なのだろう。
たまには互いに擦れ違う日があるかもしれない。
でも、それを乗り越えてまた私達は共に歩み出すからきっとこの絆は永遠なのだ。
終わりの無い愛と絆を手に私達はずっとこの物語を紡ぎ続ける。
死が二人を別つその先までもずっとこの色鮮やかな世界で永遠に。
End
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