キルアが一歳を向かえたある日。
イルミが仕事に行った隙に自分の服等を千年の魔女内に収納すると
私は小さな鞄を一つ手に誰にも告げずゾルティック家を出たのであった。
目的は世界への見聞を広める事と旅行をしてみたいとの何とも単純な動機からである。
「さあ、まずは何処に行こうかしら?」
ブザム・カレッサー 07
家を出て一ヶ月。
一人旅にも慣れた頃に私はある人物と出逢う事になった。
それは偶然かはたまた必然かは判らないが出逢って後悔する事はなかった。
この世界では私と同い年になる黒髪の少年との出会いを。
「あ、これはイルミに御土産でこっちはキルアに・・・
あ!これなんか御父様と御母様に良いかも知れないわ」
様々な物を手に取っては購入していく。
旅をして一ヶ月になるがその中でも今回やって来た街は特に大きな街であった。
なので、珍しい物も多く、の気分は上々である。
だが、そんなの楽しい時間を邪魔をする人影。
如何見ても世間知らずの令嬢と言った姿のに目を付けた柄の悪い男に知らず知らずに囲まれていたのだった。
しかし、はそれに気づく事無く、次の場所へ向かおうと踵を返した所で漸く自分の状況に気づいたのだった。
「あら?私に何か御用ですか?」
普通の女性ならば怯えそうな状況に怯む事もなく、
にっこりと微笑むに強面の男達は若干驚きを隠せない様子だった。
それで引き下がる様な連中でないのもまた然りで気を取り直す様に咳払いをするとにこう言った。
「御嬢ちゃん。この街、初めてなんだろ?よかったら街を案内してやるぜ?」
「ええ、確かにこの街に来るのは初めてですが自分で行きたい様に行くので結構ですわ。では」
別に案内などされなくても先程、街の入り口で地図を見たので
どこに何があるかはの頭の中で十分理解出来ていた。
だから、素直にそう言ったのだが
男達の目的は純粋な街の案内などではなく、の身体と御金である。
勿論、これで引き下がる筈もなく、またを呼び止める。
「いやいや、折角こうして出会ったのも何かの縁だろ?一緒に回ろうぜ」
「御親切な申し出には感謝しますが・・・」
「そう言わずにさ」
押しの弱いにここぞとばかり迫ってくる男達。
は正直街中で暴れるのもと思いながら困り果てる。
変な所が常識的なのが仇となったのだがそんなの前を漆黒が包んだ。
「??」
驚いたが顔を上げると口元に人差し指を当ててウィンクする黒髪の男。
その額には包帯を巻いており、耳には特徴的な耳飾り。
はふとその姿を見てある人物へ思い至った。
クロロ=ルシルフル。
若干、幼いが間違いなく彼である事を確信したは
抱き寄せてきたクロロにそのまま成り行きを任せる事にした。
「済まなかったな。待たせてしまって」
「いいえ。問題ないですわ」
「そうか。で、お前達は俺の女に何か用か?」
表面上穏やかにそう紡ぎながらも身の内から
殺気を放ったクロロに回りの男達は顔を引き攣らせて足早にその場を去っていった。
は流石幻影旅団の団長さんとクロロの顔を見つめながらその殺気とオーラに感服した。
その為、クロロは呆然と感心しているが男に絡まれていた恐怖心から力が抜けたのかと思い、様子を伺った。
「大丈夫か?」
紡がれた声にはっと我に返ったは満面の笑みを返すと身を離して、御辞儀した。
「大丈夫ですわ。御強い方なのだなと感服してしまって。助けて頂いてありがとうございました」
御強い方と言われて今度はクロロがぽかんと呆ける番だった。
カッコイイなど容姿を褒められる事はあっても強いと言われる事は少ない。
ましてや一般人にオーラなどを感じ取れる訳がなく、オーラを感じ取れる者は即ち念能力者。
一体何者なのだという考えが過ぎるが、
それも束の間、の反応は珍しく面白いと思ったクロロは声を上げて笑い始めた。
「くくっ!あははっ!!強い、か。いや、怯えられたかと思えばそう言う反応が返ってくるとは思わなかった」
「そうですか?」
「ああ。気に入ったよ。俺の名前はクロロ=ルシルフルだ。良かったら名前を聞かせて貰えないだろうか?」
「私ですか?私は=ゾルティックと申します。宜しくお願いします。えっと、クロロ、さん?」
自身はクロロの事を知っている為、どうにも敬称で呼ぶのが変な感じだと妙に区切ってしまったが
クロロはそれよりもゾルティックの名に驚いて目を見開いていた。
「=ゾルティック・・・?成程。だから、俺の事を強いと言ったのか」
「?」
告げられた名前に納得したクロロは一人そう呟いた。
それが聞き取れなかったが首を傾げて不思議そうに見つめているのに気づき、クロロはこう申し出た。
「。ここで出逢ったのも何かの縁だ。一緒に食事でもしないか?」
好青年と言える満面の笑みには好感を持ち、その申し出に頷いた。
そして、高級レストランの個室で互いに話をしていく内に素性も全部明らかになっていく。
勿論、は前の世界でクロロを知っていたので再確認させられただけだが
それでも実際に話してみれば若干印象も異なって来る。
クロロ自身もの事自体は様々な噂などで聞いていたが所詮は噂。
元より外に出る事の少ないの情報などデマに近く、会話を進めていく内にその本当の姿に好印象を抱いていった。
「旅、か。でも、殆ど家を出た事がないのにいきなり一人旅に行こうなんてよく思ったな」
「そう?でも、私、何かを知ったり、体験する事は大好きなの。
だから、不安などはなかったわ。それに一人旅をしたからこそこうやってクロロとも知り合えたし」
「それは俺も同感だな。読書家の奴は周りに少ないし、裏世界についてもこう大っぴらに話せる奴は少ない」
その言葉に旅団のメンバーを頭に浮かべるだったがクロロの言葉は最もであろう。
本なんて無縁の人物達の方が圧倒的に多い。
自身の周りにも読書家は少ないし、益々似た者同士だと笑った。
そこでクロロが思いがけない事を提案してきた。
それは唐突にとても愉快そうに。
「そうだ。」
「?何かしら?」
「良かったら俺もその旅に同行させてくれないか?」
クロロの予想外の提案に私は瞬きを繰り返す。
だが、旅は道連れとも言うしと安易な考えによりその提案にあっさりと頷いて微笑んだ。
「こんな私と良ければ一緒に行きましょう」
「そうか!じゃあ、暫く宜しく頼む。」
「ええ。クロロ」
こうして、私の一人旅はクロロと二人の旅になり、賑やかで楽しい思い出が増えていく事となったのだ。
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