「シャカは一緒に行かないの?」
は名残惜しそうにシャカを見上げて言った。
「ああ。だがまたすぐ会える。女神が十二宮を突破したら宴を開いて改めて紹介すると言っていたからな」
「でも、シャカも居たら楽しいのにな・・・」
「それは嬉しい事だが仕方があるまい」
「うん・・・後で絶対に色々お話しようね!」
「うむ。約束しよう」
GARNET MOON
第十二話 十二宮突破!!第七の宮・天秤宮
そんな二人の会話を聞いていた三人は、
「あいつらさっきまで凄まじい勢いで喧嘩してたんじゃねーのかよ!?」
「あいつらにとってもう過去なんだろう」
「それにしても恋人との別れみたいで腹が立ちますね」
そう言ったムウの背後にはどす黒い小宇宙が漂っていた。
「「(見えない!俺たちには何も見えない!!)」」
自分にそう言い聞かせて二人はムウから視線を逸らした。
そんな感じで処女宮を後にした四人は天秤宮へと向かった。
「次の人はどんな人なの?」
「次は老師として慕われているとても尊敬に値する方だ」
「ろうし?」
は思わず問い直した。
「そうですよ。老師と呼ばれている天秤座の黄金聖闘士は前聖戦の折にも聖闘士として戦い、生き残った方なんです。
我が師である教皇・シオンの親友でもあり、とても穏やかで人の良い御方です。きっと、老師ならすぐに認めて下さるでしょう」
「ムウのお師匠さんの親友なんだ。優しい人そうで良かった」
が安心して言うとデスマスクが不安を煽るような事を告げる。
「でも、あのじじぃの存在自体おかしいだろ?よく考えてみろ?
前聖戦って事は今から250年前の話だぜ?250前後のじじぃっていうとむしろ妖怪かなんかだろうが」
はデスマスクにそう言われて思わず想像した。
「怖い・・・」
「お前の想像とは絶対に違うから安心しろ。老師は今は18歳の肉体で生きていらっしゃる。見た目はお前と同じぐらいだ」
カノンはを安心させる為にの肩をポンっと叩きながら言った。
「・・・・なんか益々想像しにくくなってきた・・・・」
「まあ、普通はそうですね」
ムウはそういってクスリと笑った。
その仕草が余りに綺麗で思わずどきっとする。
「(なんか黄金聖闘士ってホストクラブみたいだな・・・・
美形が多くて・・・免疫がないからちょっとした仕草でどっきりする・・・)」
そんな事をが考えている間に天秤宮に着いた。
するとその入り口には人影がすでにあった。
「老師!」
「よく来たのう!」
は童虎を見て思わず固まった。
どうみても自分と同い年であったからだ。
カノンがそう言ってはいたが実際に目にしてみると本当に自分よりも年上であろうかと思ってしまう。
でも、よくよく見てみればどこか威厳のようなものを感じる。
年の功と云う奴だろうか。
どこか隙がなくて気さくで優しい感じではあるのだが。
急にそう思うと緊張が走り、少し硬くなりながらも自己紹介をする。
「は、初めまして!射手座の新たなる黄金聖闘士になりました。です!よろしくお願いします!!」
「と呼んでいいかのう?」
「は、はい!」
硬くなっていたを見兼ねて安心させるように肩を叩く童虎。
「そう硬くならんでいいんだぞ?わしの事は童虎と呼び捨てで構わんよ」
柔らかくそう微笑まれて何だか急に緊張がどっと抜けていく。
「んじゃそうする!よろしくね!童虎!!」
瞬時にフレンドリーになったのを見て思わずデスマスクがツッコミを入れた。
「順応早ッ!!!」
「だからな」
「そうですね」
「わしとしてはその方が嬉しいから構わんよ。それよりここまで来るのに相当疲れたじゃろ?少し茶でも飲んでいくといい」
そうのんびりと話す童虎に目を丸くしては聞いた。
「童虎は私を試さないの??」
すると、童虎は静かに笑った。
「試した方がよいのかのう?だがわしはもうおぬしを認めておるよ。
そなたの小宇宙は先程からよく感じていたからのう。まあ、どうしてもというならわしはの心を試したい」
「心?」
今まで大半が自分の力を見てきたのと違いはっきりと心を試したいと告げた童虎に首を傾げる。
心の何を試すのかと。
「そうじゃよ。心じゃ。とりあえずは茶でも飲みながら話そうかのう・・・」
そういって童虎は天秤宮に達を招き入れた。
そして、お茶を飲んでほっと一息ついたところで童虎はを見てこう言った。
「そなたは過去に何やら辛い体験をしておるのう?」
「!!わかるの・・?」
「まあ、ここにいる誰しもが何かしら辛い過去をもっているもんじゃよ・・・それは聖闘士としての宿命なのかもしれんがのう」
童虎は少し悲しげに目を伏せた。
「宿命・・・」
「そう、宿命・・・・だがわしが気になっているのはそなたの中に何があるのかという事なんじゃよ」
「私の中の誰か・・・?」
「そうじゃ。処女宮で微かに感じたのはあれはであってではなかったと思うんじゃがのう?微かな違いじゃったから気付かぬ者も多かろうが」
その言葉を聞いた三人も思わず驚いた。
「ではないもの・・・?そのようなものを老師は感じ取ったのですか?強大な小宇宙は感じましたが・・・」
「まあな・・・だが、それは決してこの聖域を汚すものではないとわしは思っておる」
は静かに言葉を紡ぎだした。
どこか不安げな面持ちで静かに。
「正直言うとはっきりとした正体は私にもわかっていないの」
「では、感じてはいるのじゃな?」
「うん」
は深く頷き、節目がちに話し始めた。
「その人は私に似ていて私じゃなかった。その女性は私の前世の人格だといった」
「前世?」
カノンは不思議そうにを見る。
はこくりと頷いた。
「私の心の世界。精神世界で私は初めて彼女と話した。処女宮で気絶していた時に」
「一体、何を話をしたのですか?」
「運命の時が来る。だけど、私は貴方の味方だからと言ってた。けど、それが何なのかは解らない」
童虎は思案顔で黙り込んでいる。
同じく他の面々も予想外の事にまだ思考がついてこれてない。
「だがわしはやはり聖域に仇を成すとは思えぬ。
それが今は何なのかは全く持って検討はつかぬがはもうわしらの仲間じゃ。だからわしはおぬしを信じるぞ」
童虎はそう言って微笑むとの頭を撫でる。
不安げなその表情を緩和させようとでも言うように。
「童虎・・・」
その童虎の言葉に他の皆も口を開く。
「俺達だって同じな事を忘れんなよ」
「デスマスク・・・」
「そうですよ。私たちは仲間ですよ。きっとこの先の皆もそう言ってくれるでしょう」
「ムウ・・・」
そし、てカノンがの髪をくしゃくしゃと撫で回した。
「言っただろ?俺は何があってもお前の味方であり続けると。だから大丈夫だ。何があっても」
「カノン・・・皆、有り難う。色々まだ解らない事が多いけど何があってもがんばるよ」
「その息だ」
「そうじゃ!次の天蠍宮も頑張るのじゃぞ?」
「うん。私は絶対に皆に認められるように頑張るよ!!」
私はもう過去とかだけじゃない。
大切な仲間の為に出来ることをしたい。
未来の仲間の為にも。
出来る事を少しずつ増やしていって、いつか皆の助けになればいいと思った。
そして、今の幸せが続くようにと願った。
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