童虎としばし談笑をした後、天蠍宮へと進むべく天秤宮を後にした。
「次はどんな人かな」
童虎と話した事ですっかり不安が消え去ったらしいが意気揚々とそう呟く。
「どんな奴って言ってもな・・・」
「あ!あいつも踊るじゃねーか!蠍音頭!」
「・・・蠍音頭?」
「ああ、確かにあれはそう見えますね」
しみじみと三人はそう言った。
勝手に言いたい放題言って印象を下げ様としているようにも聞こえなくはない。
が、そんな事を気にせずにはのほほんと呟く。
「蠍音頭か・・・ちょっと見てみたいかも」
「見たいのかよ!?」
デスマスクはコンマ一秒といった感じでツッコんだ。
GARNET MOON
第十三話 十二宮突破!!第八の宮・天蠍宮
「着いたな」
カノンのその声に皆止まった。
はよしっっと意気込むと早速宮内へと声をかける。
「んじゃあ早速・・・すみません!誰か居ませんか?」
「はいはいー」
「ってかなり普通にでてきやがったぞ!?」
普通に近所の誰かが尋ねてきたので出てきましたという雰囲気のミロにデスマスクのツッコミが炸裂する。
「最近デスマスク、ツッコミのキレがいいよね」
「お前のせいだ!!」
「あれ?ムウにカノンにデスマスクじゃないか!?なんか奇妙な組み合わせだなー」
「そう言われてみればそうですね。まあ、好き好んで蟹なんかと一緒にいる訳でもないんですが・・・」
「・・・お前はそんなに俺が嫌いか?」
「ええ!」
きっぱりと爽やかな笑みを浮かべて告げるムウ。
「(正直言うと好きといっても気持ち悪いんだがな・・・)」
と、カノンは心の中でツッコんだ。
そんな面々を差し置いてミロは目の前のを観察するように見つめる。
「で、その子ってあの女神が言ってた新しい射手座の黄金聖闘士?」
ミロのその言葉には御辞儀をして自己紹介をする。
「はい!初めまして!新しい射手座の黄金聖闘士になったです。よろしくお願いします」
「そう硬く話さなくてもいいよ!普通にタメで構わないから!俺は蠍座のミロ。よろしくな」
気さくにそう笑い掛けて握手を求めるミロの手を笑顔を浮かべても握り返した。
その様子にカノンが思わず尋ねる。
「おい、ミロ。お前はもうの事認めているのか?」
「俺?認めてるけど?アテナが実際に見て決めたのなら何ら問題はないだろう。
さっきから感じてた小宇宙でも悪い感じはしなかったし。それに、俺新しい黄金聖闘士は女の子がよかったしなっ!」
そう言うや否やそのままの勢いでミロはに抱きついた。
彼なりのスキンシップらしいが唐突な事に三人も呆気に取られる。
もので驚き微かに声を上げた。
が、ミロは止める事無く、ぎゅっと抱きつく。
「きゃ!」
「「「あ!!」」」
「うわ〜やっぱり間近で見るとますます可愛いな〜は」
背後から抱きついた姿勢のままでの頬にキスをする。
だが、そこまですれば目の前に居る三人が黙っている筈もなかった。
「ミロ!!貴方という人は・・・!!」
「てっめー!!を放せ!!」
「デスマスク、お前は前科持ちだがな。どうでもいいミロ!はやくを放せ」
冷静にツッコミつつ、睨みを聞かせるカノン。
だが、ミロが不服そうに異を唱える。
「いいじゃん。は嫌がってないし」
「へ?」
いきなり話を振られてはどうしようかと考えた。
だが、別に本当に嫌ではないらしく思ったままを口にする。
「嫌、ではないよ?だってミロってなんか年上に見えないんだもん」
その言葉に少しショックを受けるミロ。
「・・・俺、そんなに頼りない?」
「ええ!!そんな事ないよ?ただ、気さくで付き合いやすそうだなぁって」
「ホント?」
「うん」
不安そうに尋ねたミロにがにっこりと答えるとミロは再びギュっとを抱きしめた。
「やっぱりの事好きだな〜」
丸く収まったかと言うような態度のミロにムウが怒りを炸裂させる。
他の二人も同じくであるが。
「ミロ!早く離れなさい!」
「仮のも二十歳のクセに何やってやがんだボケ!!」
「はやくしないと異空間に飛ばすぞ?」
三人から立ち上る殺気と怒りの小宇宙に流石にヤバイと思ってミロは慌てて離れる。
「ちぇ!別にいいじゃん」
「あ!」
不貞腐れたミロの言葉の後にが急に閃いたように声をあげた。
「どうしたんだよ?いきなり・・・」
「あのね!ミロ!!」
「なんだ?」
「ミロって蠍音頭踊るって聞いたんだけど蠍音頭って何?どんなの?みたい!」
悪意など全く感じれない純粋な好奇心ゆえのその言葉にミロは思わず固まったがすぐさまデスマスクを見る。
「デスマスク!!貴様が言ったのだろ!!」
「なんで俺だってわかんだよ!?」
「お前ぐらいしか言わないだろうが!!」
「俺だけじゃね!!ムウだって頷いていたぞ!!」
「だが言ったのはお前だろうが!!」
「そうだけど・・・・って!!お前なんで爪伸びてんだよ!?」
デスマスクが気づくとミロは爪を伸ばし、臨戦態勢に入っていた。
「(爪!爪伸びた!踊りに必要?)」
しかし、は臨戦態勢など目にも入らぬ勢いでミロに見入る。
騒ぎをつくった張本人なのに余程蠍音頭が気になるらしい。
「さぁ!デスマスク、降伏か、死かどちらか選べ!!」
「誰が選ぶか!」
この二人のやりとりにムウがボソっと呟いた。
「この二人って人差し指で戦うんですよね・・・なんか滑稽だと思いませんか?カノン」
「まあ、確かにな。デスマスクは戦う時腰をそり過ぎだと俺は思うんだが・・・」
「確かにキモイですよね」
さらりとムウはデスマスクを否定した。
「もう容赦はせん!デスマスク!くらえ!スカーレットニードル!アンタレス!!」
「うわあ!アブねーな!っていうかいきなりアンタレスかよ!?」
ミロは本気で技をデスマスクに向かってした。
その技を見てがボソっと呟いた。
「なんかミロの技ってナンパに使えそうだね」
「「「は?」」」
ミロとデスマスクとカノンは間抜けな声を出した。
「キミのハートにスカーレットニードルとかさ!」
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
皆はその言葉に思わず想像してしまった。
そして、しみじみとムウが呟く。
「なんかミロって使っていそうですよね」
「使ってない!断じて使ってない!!」
「っていうかキミのハートにアンタレスとかいってそうだな。それか降伏か、死か、それとも俺か?とか!」
「あと女とヤル時、絶対に星命点と同じ場所にキスマーク刻むんだぜ」
「誰がするか!!」
「ヤル?ヤルって何を??」
必死にミロが否定しているとがとんでもない疑問を問いかけてきた。
一瞬、静けさを取り戻す面々。
「・・・お前、知らないのかよ!?」
「だから何が!?」
「いえ、いいのですよ。は純粋なままで居てください。ここの三人みたいにならないように」
「「「どういう意味だ!!」」」
「ムウが言うなら解った。でも、ミロってカッコイイと言うより可愛い感じだね。今までの会って来た人の中では」
「かわっ・・・!!」
の言葉に少しグサッっときたミロだった。
男としては可愛いと言われては複雑であろう。
カノンとデスマスクがざまーみろと思ったのは他でもない。
しかし、その後のの発言に再び驚く。
「でも、そんなミロの事好きだよ?」
「なっ!!!」
そのの言葉にミロはだんだん顔を赤くした。
言うのは慣れていても面と向かって言われるのには慣れていないらしい。
天然ゆえの友愛の好きだったのだろうと皆判ってはいるのだが。
もちろんミロもそれは判っているのだが何せ純情すぎる面があった故にすっかり固まってしまったのだ。
「ミロ?」
「だめだ。ありゃあ・・・・あいつって変なとこ純情だよな」
デスマスクは呆れながらそう言った。
「それは貴方がスレ過ぎてるんですよ。不純の塊が」
「ムウ・・・」
「お前最近、本当にいい性格してんな!!」
「お褒めに預かり光栄ですよ」
そんな会話が繰り広げられている横でようやくミロが復活した。
そして、の両肩に手を置くとしみじみと心配そうに告げる。
「・・・あんまりそういう事、デスマスクとかには言うなよ?」
「なんで?」
「なんで俺が名指しなんだよ!!」
怒りを露にするデスマスクにびしっと指差す。
「一番の危険人物だからなっ!」
「そうなの?わかった」
素直に納得する。
「お前も了解すんな!」
「デスマスク。あなた芸人を目指した方がいいですよ」
「お前な〜!!」
「で、蠍音頭ってどんなのなの?」
が再びそう尋ねた。
「・・・それは忘れてくれ!!」
ミロはそういうしかなかった。
こうして天蠍宮も無事突破!次は人馬宮!!
無人の宮。
そして、の新しい居場所となる場所へ。
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