「危ない!」
「きゃあっ!!!」

私は目の前を通り過ぎていった少女が車に轢かれそうになったので思わず、手を引いて庇ったのだが。
まさかこれが自分の運命を変えるとは思いもしなかった。







GARNET MOON

第二話 女神、少女と運命的な出会いをする







「バカヤロー!」

運転手が怒鳴って来たがあまり気にせず、少女に目を向けてみる。
怪我はないようだ。

「大丈夫?怪我とかない?」
「あ。は、はい。すみませんでした!考え事をしていたもので・・・」

少女は深々と頭を下げてきた。
このご時世には珍しい律儀でな子だなと思う。
それに、どこかのお嬢様だろうか?
どこか気品のような神聖な空気を纏っていた。
昔から身に纏う雰囲気等で人柄を察する事が得意だたtのでこの子は良い子なんだなと一人納得する。

「いやいや、全然気にしないで。
あのさ、何か深刻に悩んでるかは判らないけれどあんまり深く考え込まない方がいいと思うよ?余計なお世話かもしれないけど」

どこか顔色も悪く、眉根を寄せた表情を見て思わずそう申し出る。
見ず知らずの子に一体何を言ってるんだかと自分に自分で突っ込みを入れるも少女は驚いた表情を浮かべた後。
それはそれは綺麗な笑みを浮かべて私に礼を言った。

「い、いえ、そんな事ありませんわ!・・・ありがとうございます。見ず知らずの方なのに何だか少し気が楽になりましたわ」

余りに綺麗な微笑みにまるで女神を彷彿させられる。
慈悲と慈愛の象徴のようで。
何だか今日は変な感じだ。

「そんな礼を言われる程の事じゃないよ。でも、車には気をつけて。じゃあ、私は行くね。バイバイ」

そう言って漸く立ち去ろうとした私を少女が呼び止めてきた。

「あの!お名前は!!」

どこか縋るようなその声に私は何の躊躇いもなく名を名乗った。

「え?。貴女は?」
「沙織です」
「沙織ちゃんか。可愛い名前だね。じゃあ、もしまた会えたら話そう」

再び手を振りそこから立ち去る。
何となくだがまた会う気がした。
この出会いに何か意味がある様な気がして仕方が無かったから。
その日の空は何処までも何処までも青く。
まるで、全ての始まりを暗示するようだった。



「行ってしまわれましたわ。とても不思議な方・・なんだかとても優しく懐かしい雰囲気・・・」

立ち去ってゆくの背を見つめてそっと呟く沙織。
彼女も同じようにに何かを感じていたのだった。
しばらく思考に耽っていると黒いスーツを纏った二人の男が沙織を見つけて慌てた様子で走ってきた。

「アテナ!捜しましたよ!」
「いったいどこに行ったかと思いましたよ・・・」
「すみません。ミロ、カミュ」

その様子を見た沙織は申し訳なさそうに頭を下げる。

「いいのです。ご無事なら」

カミュと言われた青年は静かに言った。

「でも、どうしたのですか。女神がぼーっとなさるなんて珍しいですし」

ミロと呼ばれた青年が女神にそう聞く。

「やはり、射手座の聖闘士の事でしょうか?」

カミュの言葉に深刻そうに頷く沙織。

「・・・ええ。何故か射手座の聖衣は復活したアイオロスを拒んだのです。
という事は新たな後継者が出たのかもしれないと考えていたのです」
「後継者・・・」
「後継者か・・・どうせなら女の子がいいなー・・ッデ!!じょ、冗談だってば!カミュ!!」

力一杯拳で殴られたミロは鋭いカミュの視線に慌てて否定する。
カミュはカミュで小宇宙を燃やし、諌める。

「仮に黄金聖闘士なのだぞ!冗談でもそう言う不謹慎な事を言うようなら・・・絶対零度の冷気を味あわせてやる・・・」
「だ、だから冗談だろ!カミュ、ここじゃあヤバイって!!」

沙織はそんな二人のやりとりを見て、思わず笑いを漏らしてた。
そこでようやくぽんっと手を打ち二人に告げる。

「そう言えば一つ気になる事がありましたわ」

沙織は嬉しそうに言った。
嬉々とする沙織の様子に二人は顔を見合わせると改めて沙織に向き直り首を捻り問う。

「気になる事、ですか・・?」
「はい!私が危ない所をさんと言う素敵な女性が助けてくれたのです。
とても不思議な方でしたわ。何故だかとても懐かしくなる不思議な雰囲気の」

とても気になる様子の沙織を見てカミュが静かに申し出る。

「なら、調べましょうか?」
「ええ、ぜひ!もしよければ聖域に来ていただけないかしら?」
「「は?」」

カミュとミロは思わず、間抜けな声を上げた。

唐突にそんな事を言われては当然と言えば当然だが。
沙織はそんな二人の事を特に気にする事なく、何やら妄想と想像を繰り広げ、如何にして現実にしようかと思案している。

「そうですわ!私の秘書官というのもいいですわ!
なんとしてでもあのお方をお姉様とお呼びしたいですわ。本当に素敵な人だったんですから」
「「・・・・・・・・・」」

一方、その頃のは。

「ヘックシュ!あー風邪かな・・・」

そんな、話が繰り広げられているなんてその時のは思いもしていなかった。