何これ・・・?夢・・・?現実・・・?
自分に似た声が薄っすらと聞こえる。
でも、自分とは少し違う感じがする。
は靄がかかったような白濁とした意識の中そう思った。
そして、次に見たものには酷く驚き、動揺した。
自分と酷似した少女は・・・否、女性は青みがかった黒髪に金色の瞳。
その身を纏う服はまるで女神のようだった。
誰・・・?誰なの?似てるけど私じゃない・・・

『私はあなたよ。』

その声を最後にあたりは眩い光に包まれた。






GARNET MOON

第二十三話 闇夜に支えてくれる人







「また・・・夢・・・」

はそう呟き静かに身を起こした。
窓の外を見てみるがまだあたりは闇が包んでいる。
時計に目をやってみると針はまだ二時を指していた。
はどうしたものかと思いつつ、渇いた喉を潤すために水を飲むため立ち上がった。
そして、ふと思い立ち夜風にあたり考えをまとめようと外へと向かった。

「んー!・・・ふぅ・・・・気持ちいいな・・・・」

そうは行って見るもののどうしてもあの夢が気がかりで仕方がなかった。
最後に聞こえた声。
あれは処女宮に最初に行った時、意識を飛ばしたときに聞いた声と一緒だった。
私の過去とあの女性が関係していることは確かだとは確信していた。
それは根拠もなにもないが直感で確信していた。
でも、正体は結局わからずじまい。

「あーもー!!わかんない・・・わかんないよぉ・・・」

涙が浮かんできたは必死に涙を堪えようとした。
その時、背後から声がした。

?」
「シュ・・・・・・ラ・・・?」

がか細い声でシュラの名前を呼ぶとシュラは様子が変だという事に気づき、すぐさまに駆け寄った。

「どうかしたのか!?何故泣いている!?蟹か!蟹なのか!」
「いや、シュラ。違うから」

そういっただったが張り詰めていた自分の神経に限界が来て、涙をボロボロと零し始めた。

・・!?どうしたんだ・・・?俺でよければ話を聞くぞ?」

そういってシュラはの肩を掴んだ。
するとはそのままシュラの胸に飛び込んだ。

「うっわぁああああん!!シュラぁ・・・!!」

泣き叫びながら抱きついてきたをシュラはただひたすら抱きしめることしかできなかった。
そして、しばらくするとは落ち着いたのか涙を流すことをやめた。

「気は済んだか?」
「うん・・・。ゴメンね?シュラ」

そういって小首を傾げて問うにシュラは自分の理性と葛藤しつつも「ああ」と返した。

「で、一体何があったんだ?」

そう問いかけるシュラには夢の事と過去の事を少し話した。
するとシュラは困惑した表情でを見た。
だが、シュラはすぐ冷静になりこう告ぐ。

「例えその人物がお前と関係あろうがなかろうがお前はお前だろう」
「え?」
「要約すると今のお前を作っているのは過去の出来事も含め、
今まで出会った人々、経験によるものだろう?ならばそれを恐れる事はない。それもお前の一部なのだから」
「私の一部・・・」

そのあと我に返ったようにシュラは頬を掻き言った。

「その、あんまり上手く言えんが要するにあまり気にする事はない。
お前に何かあったなら、俺は必ずお前の力になる。無論他の奴らもそうだ。だから深く考えすぎて自分を追い詰めるな」
「シュラ・・・うん・・そうだね。ありがとう!なんか元気でた」
「そっそうか・・・なら良かったんだが・・・・」

が笑顔でシュラに礼を言うとシュラは顔を赤らめながらぶっきらぼうに返した。

「あの、さ・・・?」
「なんだ?」

控えめにが声を出した。

「その・・・今日だけ一緒に寝てくれない??」
「ブッーーーーー!!」

何を吹いたかは知らないがシュラはの突拍子もない発言に吹き出した。

「ダメ?」
「ダメとかそういう問題ではなくてな・・・・!!」
「お願い!!今日だけだから!!この年になって眠るのが怖いだなんてあれだけど、本当にお願い!!シュラだけが頼りなの!!」

そう言われるとシュラの頭の中でシュラだけが頼りという言葉がリフレインされた。
更には潤んだ瞳で上目遣いときた。
好きな女にそこまでされれば断る事など出来る筈がない。
シュラは仕方がないといった感じで「わかった」と返事を返した。
そして、その夜ははシュラの宮に泊まる事となった。
次の日・・・・

「おいっ!シュラ!いつまで寝てんだ!?」
「シュラ。デスマスクの言うとおりだ。そろそろ起きないかい!」

すると、デスマスクはシュラの寝室を見て固まった。

「オイ・・・アフロディーテ・・・・あれはなんだ?」
「まさか・・・・シュラが君のような真似を!?」
「お前、失礼な奴だな・・・」

そう、デスマスクとアフロディーテが見たものはシュラの腕の中で気持ちよさそうに眠るの姿だった。

「ん・・・・あれぇ・・?デスマスクにアフロディーテ?おはようぅ・・・」
「って!!おい!また寝る体勢に入るな!!これはどうなってんだよ!?」
「なんだ・・・??騒がしい・・・・」

そういってシュラが身を起こした。
ちなみにその時のシュラの姿は上半身裸といったものだ。
今の状況から考えれば十分に誤解を招く状況である。

「シュラ・・・・君はに一体何をしたんだい?」

シュラはそう言われてアフロディーテを見てみるとその手には薔薇が握られていた。

「ちょ、ちょっと待て!!何か誤解してないか!?」
「何が誤解だ!!どう見ても見ての通りじゃねーか!!」

デスマスクも積尸気冥界波の準備はできている。

「待て!!俺は何もしていない!!」
「中学生日記だと思って油断していたよ・・・蟹以上に変態な奴がいたとは・・・・」
「誰が変態だ!!シュラ、覚悟はいいだろうな?」

今にも攻撃に入ろうとした瞬間、が起き上がった。

「ふぁあ〜!よく寝た!!れ?アフロディーテにデスマスクなにしてんの?
あ!シュラ!一緒に寝てくれてありがとう。お陰で久々に気持ちよく寝れた!!」
「そうか。ならいい。また何かあったならちゃんと言うんだぞ?」
「うん!」

そのやりとりを見ていたデスマスクとアフロディーテは状況が理解できぬまま立ち尽くした。

「オイ、結局どういう事なんだよ・・・」
「まあ、考えて見ればシュラに寝ている相手に手を出すほどの甲斐性があるとは思えないしね。蟹じゃあるまいし」
「だから俺は蟹じゃねぇ!!」