私が居なければ貴方が生きる未来があったのでしょうか?
私が居なければ皆は幸せだったのでしょうか?
私がすべてを壊したのでしょうか?

『貴方のせいじゃないわ。貴方は生きなければならないのだから。それが私の罪と罰。』






GARNET MOON

第二十六話 黒との対面







「また・・・・夢・・・・」

朝日が差し込める朝に聞いた声には思わず呟きを漏らす。
空は天の階のように光が雲間から差し込んでいる。

「私は一体・・・何なの・・・・」

考えを巡らすほどその答えは闇の中。

「考えても仕方ないか・・・・さてっと!さっさと着替えないとね」

は取り敢えず着替える為に衣服に手をかけた。
日本帰国を終えて以来、は夢を見続けていた。
何度も同じ声が頭の中で響くのであった。
今日は更に鮮明では気にしないようにしようと思ったが声が耳に残って仕方なかった。

「よし。着替え完了。今日は休みだし買い物に行かないと・・・」

だが、はまだギリシャの街の地理を良く知ってるわけではなかった。

「誰かについて来てもらうしかないよね・・・う〜ん・・・
とりあえず教皇の間に行ってみようかな?誰か今日手が空いてる人がいないか聞いてみようっと」

そういうわけでは早速教皇の間に向かったのだが教皇の間は悲惨な事になっていた。

「おは・・・・・!」
「このクソ兄貴!!!俺がなんだと!?」
「ふん。お前はそんな事も理解できないのか?」
「ふざけやがって!クソ兄貴、そんな事だから親父くさいとか言われるんだよ!」

・・・・・・親父くさい?
は唖然として見ていたが非難をしていたミロ、アイオロス、カミュ、シュラ、ムウに近づいた。

「どうしたの?これ・・・・」
じゃないか。今日は休みだろ?」
「うん。そうだけど買い物に行こうと思って誰か暇な人捕まえようかなって来たんだけど・・・」

静かに目線をサガ達に向けた。
相変わらず不毛な言い争いを続けている。

「今日は何が原因なの?」
「実は・・・カノンがサガの書類にインクを零したんだよ・・・」
「・・・あの二人バカでしょ」

は呆れてその場に座り込んだ。
すると急にカノンが声を上げた。

「マズイ!!」
「?」

その声にが振り向くとそこにはサガが立っていた。
しかし、なにやら様子が変だ。
髪が黒くなっている。

「サガ・・・?」
「くっくっくっ!小娘ちょっと来い!」
「へっ?きゃっ!」

サガはそういうとを抱き上げた。

「貴様!卑怯だぞ!!」

カノンはサガを見つつそういった。
は依然状況が飲み込めない。
いつもとどうにも様子がおかしいサガ。

「それ以上近づいて見ろ。この小娘がどうなってもいいのか?」

サガはの顎に手を掛けた。
全く動かず暫くじっとしていたがそのまま拳を上に突き上げた。
見事なまでのアッパーが決まる。

「ぐはっ!?こ、小娘・・・!?」

は怯んだサガから降りると怒りの形相でぎっと睨みつける。
そして、びしっとサガを指差すと高らかと告げた。

「誰が小娘ですって!私はよ!!それに喧嘩に私まで巻き込まないでよね!」

一同は唖然となった。
あの黒いサガにはアッパーを喰らわせたかと思えばあまつさえ説教までしているのだ。
説教をし終えたは一息つくと目の前のサガを観察する。
そこでようやく何かを思い立ったらしく手を叩く。

「もしかして貴方が噂の黒いサガ?」

は呑気に問いかけた。

「そうだ・・・というか小娘。私が怖くないのか?」

どうにも不思議な生命体だと言わんばかりにマジマジと見つめる黒サガ。
どうやらに多大な興味を抱いたらしい。

ビコッ!!!

が、再び怒りに震えたがピコハンを力の限り振り下ろした。
それもかなりの小宇宙を込めて。

「〜っっっ!!!」
「小娘じゃなくて!」

小娘と呼ばれるのが気に食わないらしいは再び怒りを最熱させる。
サガは相当痛かったらしく声にならない叫びを上げている。

はそれを見つめながらまた一息つくと静かに告げた。
どうやら先程の質問に答えてはあげるらしい。

「サガには変わりないんだから怖くなんてないわ。誰だって心に闇は存在する。
サガの場合はそれが貴方という形で出てくるだけ。闇を否定する事はその人自身を否定する事になるわ」

その言葉に辺りは静けさを増した。
目の前のサガもしばし沈黙を守り、を見つめていたが急に口角を上げたかと思うと声を出して笑い出した。

「クックックっ!!。お前の事気に入ったぞ。中々おもしろい奴だ」
「それはありがとう。ところでサガは今日暇なの?」
「暇といえば暇だ。しばらくあいつは起きないだろうしな。相当疲れが溜まっていたらしい」

何だかんだとどこか中の人格を気遣うような言葉に根は一緒なのだと実感する
そして、微笑むとサガに尋ねる。

「そっか・・・黒いサガはしんどくないんだ?」
「私はあいつが活動しているときは寝ているのでな」

すると、はよかったと安堵の表情を浮かべた。

「じゃあ、サガは今仕事できないし、買い物に付き合わない?」
「オイッ!!!」

カノンはその言葉を聞き、を止めようとしたがは容赦なくカノンの顔に先程のピコハンを投げつけた。
見事にそれは放物線を描きカノンの顔にクリーンヒット。
凄まじい音と共にカノンが倒れる。

「グオッ!!」
「カノンはサガの代わりに仕事しなさい!たまには!!・・・さてと、んじゃあサガ行こうか!」
「ああ」

は黒サガの手を引き、その場を後にした。
去り際に黒サガがにやりとカノンに向けて勝者の笑みを残していった。
残された者たちは唖然となりその場に立ち尽くし、カノンは誰にも心配される事なく、悶絶していたのだった。