星矢の一言から始まったこの日記だが・・・
星矢、あれは完全に小学生レベルの日記だと思う。
とりあえず今日はこの紫龍がさんについて調べてみるとする。






GARNET MOON

第二十八話 射手座観察日記・紫龍編







というわけで人馬宮まで来てみたのだが・・・
よくよく考えてみればどうしたものか・・・
そんな事を考えていると唐突に背後から声が聞こえた。

「あれ?紫龍くん??」
さん!」
「やっぱりそうだ。どうかした?私に用事??」

珍しくその日のさんは仕事をするような服ではなかった。
どうやら休日らしい。
イマドキというのだろうか?
日本の女性の流行に合わせた服なのだろうとても愛らしい服装である。
普段大人っぽいさんの少女らしい姿を垣間見た気がした。
その見慣れぬ姿に思わず見入っていたらしく気付けばさんが心配そうに声をかけてきた。

「おーい。紫龍くん?」
「あ、はい・・!すみません。珍しいなと思ったらつい・・・」
「珍しい?あ、ああ!服ね。今日はオフだからこれから街にでも出ようと思ってたのよ」
「そうだったのですか」
「うん。あ、そうだ!紫龍くん暇?」
「え?あ、はい。特に用はないですが・・・」
「なら折角だし、一緒に街に出かけない?」

その言葉に俺は心底驚いた。
その・・・なんというか今まで生きてきて女性と二人っきりで出かけるというのは初めてだったのだ。
殆ど修行ばかりだったせいもあるだろう。
だからかその言葉を聞いた途端、緊張し、身体が強張った。
そう、それだけなのだ。

「お、俺なんかでいいのですか?」
「え?なんで?紫龍くんとかとはまだそんなにお話したことないし、凄く楽しそうだな〜って思ったんだけど。だめかな?」

首を傾げ、上目遣いで尋ねるさんの姿にこ、鼓動がっ・・・!
動揺を感じつつ、平静を保てと自分に言い聞かせ返事を返す。

「いっ!いえ!!俺は全然かまいません」
「そう!よかったぁ〜じゃあ、早速行こうか!」
「・・・・・!!」

そういってさんが歩き出したのはよかったのだが・・・・
手!手を握られている!!
その時の俺は正直混乱していたので何をしていたのかあまり覚えていない。
どこをどうやって街まで出てきたのかも。
ただ、酷く赤面していただろうと思う。
ハッと我に返ったのはさんの声が再び響いた時である。

「どうしよっかなぁ〜とりあえず食事しちゃおうか?」
「そ、そうですね」
「じゃあ、何がいいかなぁ〜」
「そこのお二人さん!」
「「はい??」」

いきなり声をかけられ驚いていると道化師が何かの宣伝をしているようだった。

「お姉さん、素敵な恋人をお持ちですね♪」

思わずその言葉に二人して顔を紅く染めて慌てて否定する。

「へ?ち、ちがっ!!」
「そ、そうだ。俺たちは・・・・」
「クスクス。別に恥ずかしがらなくてもいいんですよ。今、カップルの方にちょっとしたものを配ってるんでどうぞ。お一つ」
「は、はぁ・・・ありがとうございます」
「それじゃあ、お二人ともお幸せに♪」

全く話を聞かずにその道化師はその場を立ち去っていった。

「だ!だから違うって!!」
「・・・・・・・」

俺は赤面したまま、反論すら出来ていなかった。
まさか恋人同士に思われるとは思っていなかったものだから・・・
その、確かにさんはき、綺麗な女性である。
恋人同士に思われることに悪い気はしなかった。
い、いや!俺には春麗が!!し、しかし・・・・
そうやって苦悩しているとさんが唐突に話しかけてきた。

「ね!まちがえられたのは大変だったけどすごく綺麗なものもらっちゃった!」
「え?あ、本当ですね」

さんの手の平に乗っていたのはいかにも女性の好きそうな可愛いイルカのキーホルダーだった。
そのキーホルダーには綺麗なキャッツアイの石がついており、なんとも不思議な輝きをしていた。

「あ、二つ入ってる。んじゃあ、私がピンクで紫龍くんが青ね」
「え?お、俺は別にいいですよ。気に入ったのならさんが持っていてください」
「んーでも・・・記念としてさ!」

そこまでいうならといいながらさんからキーホルダーを受け取った。
正直いうととても嬉しいと感じた。
何故なのかは理由がわからないがとても嬉しかった。
それからは他愛のない話をしつつ、街を見て回った。
一緒に街に出かけて思ったのだが、さんはとても気の利く人だと思った。
細かなことに気を配れる人はあの聖域では珍しいと思う。
さんはきっと人を変えることの出来る人間だと思う。
でも、一つ気になったのは優しいが上にいつか身の破滅を呼ぶのでは?
それだけが気がかりだった。
言い知れぬ不安はあるがたぶん気のせいだろう。
その日はとても心休まる一日になった。
そして、悩みの種が増えた日でもあったが・・・・



○月×日 担当:紫龍

今日は俺が担当だ。
さんと行動を共にして思ったのはとても優しく気配りの出来る方だと思った。
正直、肉体の強さというよりは精神的な強さを見た気がする。
だが、少々気になったのは聖闘士としては少し優し過ぎるのではないか?ということだ。
まあ、何はともあれあの人は悪い人ではないだろう。
俺に言えるのはそれだけだ。
なので次は氷河。
お前に託す。