全く、何故こんな事になったのだろうか・・・
そもそも我が師カミュが認めた人間だ。
確かめるなどという事をしなくても・・・
悩んでも仕方ないか。






GARNET MOON

第二十九話 射手座観察日記・氷河編







いざ、観察をするといっても特にする事がなく俺はどうするべきか考え込んでいた。
すると我が師カミュとミロ、さんがこちらにむかって歩いてくるのが見えた。
これは丁度いい機会なのではないか?
そう思った俺は思い切って声をかける事にした。

「我が師カミュ!!」
「氷河か?このようなところでどうしたのだ?」
「い、いえ、その鍛錬をしようと思いまして・・・」

流石にさんを観察しようと思ってとは言えずにそう口走った。
するとさんの顔がパァーと明るくなった。
一体何事だと不思議そうに見ているとさんがそのままキラキラと瞳を輝かせて駆け寄ってきた。

「氷河君!!」

そういうとさんは俺の両手を握った。
いきなりの出来事に俺は驚き顔が火照るのを感じた。
そんな自分に常にクールにならねばと言い聞かせるがどうにもならない。
そして、次にさんが放った言葉は予想もしないものだった。

「一緒に鍛錬しよ!!」
「え?」

そんなわけで俺とさんは鍛錬をする為に少し広さのある野へと出てきた。
話によると最初に鍛錬を一緒にするつもりだったカミュとミロに急に仕事が入ったらしい。
それで誰か鍛錬をするものがいないか探そうとしていたそうだ。
その時に俺が丁度通りかかったという具合だ。
だが、俺にとっては幸運だった。
観察としては申し分ないシチュエーションだ。
どれほどの聖闘士の力があるのかもわかる。

「氷河君!とりあえず組み手から始めようか!」
「そうですね。体慣らしには丁度いいと思います」
「うんじゃあ。手加減なしだよ?」
「え!?し、しかし・・・」
「あー!!女だからって手加減しようとしてたね?
それじゃあ意味がないの。私は本当に強くなりたい。それにね?あんまり侮らないでほしいな?」

必死になってそういったさんの姿に俺は思わず吹き出してしまった。

「クッ・・・!」
「あ!な、なんで笑うの〜!!本気なのに!!」
「い、いえ!その可笑しいんじゃなくて・・・なんか可愛いなと思ったから・・・・・」

俺は何を言ってるのだろう?
そう思ったが事実そう思ったのだ。
この女性はなんと愛らしいのだろうと。
そう思うと胸が微かに高鳴った。
そんなことを気にしているとさんは口をパクパクさせたまま顔を赤くしていた。

さん?」
「い、いい大人をからかうんじゃありません!」

また愛らしい反応に俺は笑って返答する。

「いい大人って・・・そんなに年は離れてないじゃないですか」
「そ、そうだけど!!とりあえず!ほ、ほら鍛錬始めよ!!いくよ!!」
「え!?ちょっ!!」

いきなりさんは照れ隠しか蹴り技をいれてきた。
俺は咄嗟にカードしたので直撃は間逃れたものの相当なものだ。

さんって、聖闘士になる前から何か武術でも、やってたんですか?」
「まあ、ね!それなりに!!」
「それで、技のキレが!!いいんですね!」

さんと俺は話しながらも互いに蹴り技を出したり、ガードしたりと忙しなく動く。

「よしっ!!隙見っけ!!」
「うわっ!!」

俺はほんの些細な隙を突かれて後方へと吹っ飛ばされた。

「いてて・・・」
「ああっ!ご、ごめん!そんなに飛ぶとは思わなくて!」
「だ、大丈夫です」

思わず俺も驚いた。
これほどにも凄まじい蹴りが出せるとは・・・・
やはり黄金聖闘士としての力は備わっているのではと思った。

「はい。掴まって」

そういってさんは心配そうに手を差し出した。

「あ、はい」

俺も慌ててその手を取る。
差し出された手はとても柔らかく華奢で女性特有の感触であった。
あ・・・れ・・・?
なんだかなんとも言えない気分に襲われる。
顔が赤くなるのを感じた。
さっき微かに感じたのと同じ。
でも、それ以上に胸が高鳴るのを感じる。
ドクドクと鼓動が耳に障る。
俺は赤い顔を隠すように下を向きながら立ち上がった。

「大丈夫??怪我とかしてない?」

心配そうな声が響くけれどそれどころではなかった。

「だ、大丈夫です。だ、だから手を・・・・」
「あ。私ったらいつまで握ってんだろう・・・」

さんは照れくさそうにしながら俺から手を離した。
それからは軽く筋肉トレーニング等をして終わったんだが。
一人で部屋に帰っている間、名づけようもないこの感情へのとまどいを隠せなかった。



○月×日 担当:氷河

さんは実に強い人だと思う。
鍛錬を一緒にしてみてわかった。
小宇宙の使い方も無駄がない。
動きにも無駄がなく、技のキレもいい。
さすがは黄金聖闘士に選ばれた人だと思った。
それに意外に可愛らしい側面もあっていろいろなことが知れた。
ま、まあ、とりあえず次は瞬だ。