聖域中が何故か異様なほどざわめいていた。
その理由は明白だった。
異例中の異例で聖闘士・・・
しかも射手座の黄金聖闘士になったに対しての説明がまだされていなかったからである。
さらに言えばが女であるのにも関わらず仮面をしていないという事にも問題はあった。
今まで、色々な噂などが飛び交っていた為、尚状況が悪くなったのである。
そして、先日ついにアテナが動く事になった。






GARNET MOON

第三十一話 己が力を証明せよ!・前編







「ええっ!?私とデスマスクで決闘!?」

いきなり沙織に告げられた言葉には驚きを隠せなかった。
沙織もこうなる事がわかっていたのか順を追って説明し始めた。

「お姉様が黄金聖闘士になったことを正式に知る者はまだ極僅かなのです。
そして、その実力を知るのもまた同じく僅かです。それもあり今聖域中でお姉様に対する不満が募ってきているのです」
「それで今回、アテナはとデスマスクの決闘を行う事を決めたのじゃ」

シオンが付け足すようにそう言った。

「でも、なんでデスマスクなの?」

同じく呼び出され隣に居たデスマスクを指し、は尋ねる。

「なんだぁ?俺と戦うのが怖いのかよ?」

挑発するような物言いをするデスマスクに少しむっときた

「そんなわけないでしょ!?誰が相手だろうとやってやろうじゃない!!」
「ほぉ・・・それは見物だなぁ・・・まあ、俺様に勝てるわけがないと思うがな」

またまた挑発を繰り返すデスマスクにはついにキレた。

「上等じゃない!絶対に勝ってやるわよ!沙織ちゃん!この件引き受けるわ!!日時と場所は?」
「一週間後の正午より場所は闘技場にてですわ」

その言葉を聞くとは「わかった」といって踵を返した。
そして、再びデスマスクに向き直りこう宣言した。

「絶対に勝つからね!」
「まあ、がんばれや」

デスマスクがそう言って片手をひらひらと振るとはそのまま教皇の間を後にした。

「これでいいんだろ?」

デスマスクが真剣な表情をしてアテナとシオンを見た。

「ええ、貴方がああ言ってお姉様を挑発して下さらなければお姉様は本気にはなってくださらなかったでしょう。お優しい方ですから」

笑顔を浮かべつつもやはり謀った事が心苦しい様子である。
シオンも同じような表情を浮かべ呟く。

「そうじゃのう・・・人一倍優しいからのう。は。デスマスク、お主もしかと任を果たせよ」

シオンが釘を刺すようにそう言うとデスマスクは踵を返した。
デスマスクは踵を返すと首だけ振り返り二人に告げる。

「わかってる。その代わり俺も本気でやらせてもらうぜ?」

不敵な笑みを残し、そのまま教皇の間を後にした。
教皇の間を出た所でデスマスクは一人呟いた。

「本気でやり合わなきゃ今回の決闘は意味がねぇーんだよ。あいつの為にもな」

それは、誰よりもを思いやる言葉であった。
それから二日後。
アテナより決闘について公布された。
知らされていなかった黄金聖闘士達は皆驚きを隠せなかった。
しかし、理由は誰にとっても明白であり、反対する者は居なかった。
ただ、皆の身を案じていた。
その頃、は森の中で鍛錬に励んでいた。
最近のはようやく小宇宙も戦闘技術も安定してきていた。
今の課題はそれら全てを上手く利用し、皆と同じように必殺技を使えるようになるかだ。
はこの二日その為の訓練に明け暮れていた。
それを見かねてやって来た人物が居た。

「おい、そんなに闇雲にやっても意味がないぞ?」

唐突に掛けられた言葉には驚き振り返った。

「カノン!?」
「よぉ。苦戦しているみたいだな」

そう言って近づいて来たカノンを見ては構えを解いた。
カノンは抉れた大地に気をつけながらの元へと向かう。

「どうしてこんなとこまで・・・」
「もうすぐデスマスクと決闘なんだろ?」
「うん・・・でも、今のままじゃあ私負けちゃうし・・・」
「で、闇雲に鍛錬してたってか?」

そう聞かれてコクリと頷く。
するとカノンは急にの頭をワシワシと撫で回した。

「うわっ!?ちょっ!カノン!」
「お前・・・本当バカだろ?」
「ば、バカって・・・」

はバカと言われて言い返そうとした。
するとカノンが予想外のことを口にしたのだ。

「俺が鍛錬に付き合ってやるよ」
「え・・・でも・・・」

目を見開き驚くがその後申し訳無さそうに顔を歪める

「でもも何もあるか。お前はもう少し人に頼るってことを知れよ。俺たちはお前の仲間なんだからさ。もっと頼っても甘えてもいいんだぜ?」

カノンの言葉に心打たれ感動すると満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう・・・カノン!」
「ああ。それにまあ、俺が来なくても兄貴が来みたいだったけどな」
「え?」

意味ありげにそう言って後方を指差すと後ろの茂みからサガが姿を現した。

「サガ!?」
「・・・」

どこか気まずそうにどうする事もできずに立ち尽くすサガにカノンが尋ねた。

「どうせ兄貴も俺と同じ理由で来たんだろう?」
「ああ・・・」

気まずそうにそう言うサガには再び嬉しそうな顔を浮かべた。

「サガも心配してくれてたの?」
「当たり前であろう?それに私とカノンだけではない他の皆も心配していた」
「そっか・・・皆にも後でありがとうって言わなきゃね」

そう言うとはサガを見た。

「あのね・・・サガも一緒に鍛錬付き合ってくれる?」
「私もか・・・?」

そのの発言に少しカノンはゲッという表情を浮かべる。

「駄目かな?」
「私は構わぬが・・・カノン、お前も良いのか?」
「・・・良いも何もがそう言ってんだし、仕方ないだろう」

肩を竦めて諦めたように溜息を吐くカノン。

「ならば引き受けよう」

サガがそういってに微笑むとは嬉しさの余りかサガに抱きついた。

「ありがとう!サガ!それにカノンも!」

そうして、次の日よりサガとカノンによる激しい鍛錬が始まった。