『貴方はもうすぐ知る事になる真実を。』
・・・誰?私の中に居る貴方は誰なの?
『私は貴方。貴方は私。』
そんなのおかしい・・・
『そう、貴方が気づかなければ私達はこのまま。・・・どうか気づいて。私を解放して・・・?』
解放・・・?貴方は一体何から解放されたいの・・・?
『それは・・・』
GARNET MOON
第三十三話 己が力を証明せよ!・後編
「・・・!!」
また、夢。
何かを訴えようとしては消えていく。
この夢に何か意味はあるのだろうか・・・
の中で日に日に大きくなっていく疑問。
けれど、答えが出るわけもない。
ただ、漠然とわかっているキーワード・・・ガイア。
これが何を意味するのかまだわからない。
けど、これが謎を解く鍵である事は間違えないと不思議と確信していた。
「さて・・・こればかり気にしてはいられないんだよね・・・」
そう言うとはいつもと違う表情を浮かべて立ち上がった。
その顔には覚悟が見えた。
今日は、決戦の日。
纏う雰囲気が変わるのも不思議ではなかった。
は射手座の聖衣を纏った。
戦闘をする為にこの聖衣を纏うのが初めてなは心持ち緊張した面持ちである。
それに気づいたかのように射手座の聖衣が光る。
自分がついてるのだから安心しろと言わんばかりに。
「大丈夫。私は負けないから」
その一言に納得したように聖衣は再び光った。
黄金の翼を靡かせて、は闘技場へと向かった。
「凄い熱気・・・」
思わずが呟いた言葉。
それは肌にひしひしと伝わる人の熱気を感じて思わず出た言葉だった。
まあ、それだけの人が集まるのは仕方ない事だろう。
不思議とそれだけの人が集まっているのにも関わらずプレッシャーを覚えない。
妙に落ち着いている心のせいかもしれない。
「なんか今日は変な感じだなぁ・・・」
自分自身に違和感を感じるが呟いた言葉。
妙に静かな心。
まるで嵐の前の静けさみたいな。
しかし、気に留めている間もなく、はついに闘技場の入り口へと辿り着いた。
開ければそこからは戦場。
味方は自分のみ。
いや、自分とこの聖衣のみ。
「行こうか・・・アスちゃん」
頷くように光る聖衣を見つめた後、は重厚な扉に手をかけた。
扉を開けるとそこには大勢の観衆。
そして、対戦相手であるデスマスクの姿だった。
「おっせぇーぞ。」
挑発するように笑いを浮かべて言うデスマスク。
だが、は特に何を返すわけでもなく前へと進んだ。
観衆の前にの姿が完全に露見された時、ざわめきが止んだ。
そう、の発する威圧感、闘気。
そして、研ぎ澄まされ洗練された小宇宙を感じたからだ。
一瞬誰しも動くことを忘れた。
例外を除いては。
黄金聖闘士と女神はさすがだと言わんばかりに微笑を浮かべている。
静寂が続く中、教皇であるシオンが女神に代わり事の次第を説明する。
「皆の者、聞くがよい。聖域に新たな聖闘士が誕生したことは皆も知っているな。
射手座の黄金聖闘士、。今回はこの者の力の真偽を確かめるべくこの決闘を行う事にした」
その声で再び観衆はざわめく。
「静まれ!これは女神の決定によるものである。
そして、女聖闘士として身に着ける筈の仮面の件。これは黄金聖闘士の為、特例として排除する事とした」
そうシオンが言い切った後、女神である沙織が立ち上がった。
「教皇シオンが説明した通りです。これに何か反論があるものはありませんね?」
女神の声に静けさを増す闘技場内。
全て同意という意思の表れだろう。
「よろしい。それではこれより黄金聖闘士、射手座のと蟹座のデスマスクの決闘を始めます」
その声に、静かに話を聞いていたとデスマスクは互いに睨み合う。
「今更、手加減とか言うなよ?」
「当たり前でしょ」
「それでは・・・・始め!!!」
高らかと開始の合図が宣言される。
するとが一歩踏み込んだ。
その瞬間、デスマスクの前からの姿が消える。
だが、すぐさまデスマスクは振り返り背後に回ったの攻撃を受け止める。
「へぇ?ちょっとはやるようになったじゃねぇか」
「そりゃどーも!」
受け止めるや否や互いに攻撃を仕掛けあう。
だが、互いに攻撃が一度も当たる事はない。
その拳速の速さは周りに見えぬほどの速さだ。
しかし、デスマスクはの一瞬の隙を見逃さなかった。
「ほら!隙だらけだぜぇっ!!」
「!!!」
その声に瞬時に防御体制に入っただった。
しかし、やはりデスマスクの方が戦闘経験は上。
一瞬の隙を突かれてボディに攻撃を入れられる。
は声を出すこともないまま壁際まで飛ばされる。
「お姉様!」
沙織が思わず立ち上がるが隣に居たシオンがゆっくりと制した。
心配そうに他の面々も見つめる中、デスマスクは冷静にが飛ばされた砂塵の中を見る。
「(これで終わりならあいつもそこまでってことだ。)」
そう、ここで終わるようならばこの先、もし戦いがあるとしたならば真っ先には死ぬ。
そのようなことがない為にもデスマスクは本気で戦っていたのだ。
それがを傷つける結果になっても。
デスマスクにとっての優しさなのだ。
そして、そんな中。
は・・・
「(動けないや・・・骨、折れたかな?)」
視界が霞む中、懸命に身体を起こそうとしていた。
しかし、所詮この間まで学生だったにとってそれは容易なものではない。
ただ、呆然と霞む景色を見つめた。
そして、瞳からは一滴の涙。
「まだ・・・諦めたくないよ・・・・」
これに負ければは聖域に居れなくなる。
折角、大切な場所ができたのにそれさえも踏み躙る事になってしまう。
だから、立ち上がろうとした。
何度も何度も。
だけど意識は混沌へと落ちていこうとする。
その時、だった。
『貴方は・・・望むのね。彼らの傍にいる事を。』
・・・誰?また・・・聞こえる・・・
『貴方は私。私は貴方。何度も教えた筈よ・・・』
でも、私は知らない・・・貴方を・・・
『いいえ。貴方は知っている。私を。貴方と私は一つ。貴方が望むなら私は貴方の願いを叶える。あの時のように・・・』
あの時・・・・?
『そう、かつて貴方が生きたいと望んだときのように・・・・』
私が・・・生きたいと・・・望んだ時・・・
『さあ、解放なさい。貴方の心の鎖に縛られた私を。私の力を貴方は引き継ぐのです・・・貴方は・・・・なのだから・・・』
私が・・・なの?じゃあ、ハーデスが言ってたのは・・・・
『そう・・・貴方の事。、今こそ時です。覚醒の時なのです。』
その声と同時にの意識は途絶えた。
そして、それと同時に尋常ではない小宇宙が辺りを覆った。
それは神をも呑むような小宇宙。
「なんだ・・・!?これは!!!」
傍に居たデスマスクが一番にそれに気づく。
当たりも騒然となるがその小宇宙の主に気づきそちらを見つめる。
「・・・お姉様なのですか・・・?これは・・・・」
「凄まじい小宇宙じゃのう・・・これはまるで神!」
シオンの声に他の黄金聖闘士たちも顔を見合わせる。
「ははっ・・・!の中に眠ってやがった何かが目覚めたってわけかよ。上等じゃねぇか!」
デスマスクは楽しむようにそう言った。
すると次の瞬間、デスマスクは背後に気配を感じた。
振り返るとそこに立っていたのは高濃度の小宇宙を纏ったの姿。
ただ、いつものような様子ではない。
冷たいそんな印象さえ受ける。
「・・・じゃねぇな・・・誰だ?」
「私は・・・でありでないもの。・・・の望む未来を与える」
「何を・・・!?」
尋ね返そうとした瞬間、は手を翳す。
「・・・神の最後の審判」
その声と共に光が炸裂する。
爆音が当たりに響き、デスマスクの身体は容易に飛ばされた。
両腕に刺さる十字の刃が壁にデスマスクを縫いとめる。
まるで神による断罪だと言わんばかりに。
軽く呻いた後、意識を失ったのを見たシオンは合図をした。
「そこまで!!!勝者、!!!」
その声が響くと同時にの身体も揺らぎその地に伏した。
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