ただいま巨蟹宮にいます。
正直言うと早く出たいです。
最悪です。
センスないです。
っていうか早く今すぐ出たいのです!






GARNET MOON

第九話〜十二宮突破!!第四の宮・巨蟹宮








「あのさー次の人はどんな人?」

私が聞くとムウとカノンはぴたりと動きを止めた。

「「・・・・・・・」」
「や、なんで止まるの?え、え?」
「・・・いや、はっきり言うと近づくな」
「そうです。近づかない方がいいですよ。あんな蟹など近づかない方がいいですよ。本当は通りたくもないのですが」
「そうだな。趣味の悪い、イタリアン優男だからな」

うん。
何と言うかここまで毛嫌いされる人って一体どんな人なのだろかと好奇心が沸いてしまう。
蟹と連呼されているが何故そこまで誇張して蟹って呼ぶのだろうか?
余程奇抜で変人なのかと思ってしまう。

「そんなに変な人なの?」
「変です。どう考えたって蟹です」

ムウ・・・もしかして凄いその人の事が嫌いなの?
うん、言わずともそうなんだよね。
それだけ嫌そうな顔をしていれば何となく察しはつくよ。

「第一、あじゃぱってどんな叫び声だよ」

ごめん、カノン。
ちょっとその叫び声聞いてみたいと思った。

「あの、さ・・・そのついたんだけど・・・」

二人は巨蟹宮を見上げて、立ち尽くした。

「「・・・・ハァ・・・」」

物凄い憂鬱そうな深い溜息を吐く二人。
あの忘れてませんか?
私、今からその人に聖闘士って認めて貰わなきゃいけないんですけど?
会わなきゃいけないんですけど?
とりあえず深呼吸をして気を取り直すと前を見て尋ねる。

「すみませーん!誰か居ませんか?」

返事はない。
サガみたいに入ってこいって事かな?と思い、とりあえず一歩踏み出した。

「とりあえずお邪魔します」

が、何かグニュッとした柔らかいものが足下に・・・
ん?なんか踏んだ?のかなと私は恐る恐る足元を見てみた。
そこには物凄い形相の死人の顔があり、私は数秒固まった後。
恐怖の余り全力疾走で駆け出した。

「ぎゃああああああああーー!!」
「お、おい!!」
!!一人じゃ・・・」

制止する二人の声など聞こえる訳もなく、は巨蟹宮の奥へと姿を消してしまった。

「いっちまいやがった・・・」
「そりゃあ死人の顔を踏めば誰だって驚くでしょうに」
「先にいっとくべきだったな・・・・」
「とりあえず、はやく追いましょう。蟹に何かされても困りますし」

ムウのその言葉にそうだなと力強くカノンは頷き巨蟹宮へと足を踏み入れた。
一方、走り去ってしまったはというと走れど走れど柔らかな感触が続く、
宮の中で泣き叫びながらやはり走っていたが途中で限界が訪れて立ち往生していた。

「な、なんなのよ!!この宮は!!なんでこんなに顔があるのよ!!!」

走り抜ける事もできるだろうがどうにもこうにも感触が慣れないのだ。
それでなくても薄暗いというのにこの全面にびっしりの顔には軽く半狂乱であった。
そんな時、ふと後ろから声が響き渡った。

「お前、こんなとこで何・・・「ぎゃああああああああーー!!出た!!!」」

いきなりの事に驚き、思わず小宇宙をかなり集中させてハリセンで何かを叩いてしまった。
数秒ほど固まると漸く我に返って恐る恐る後ろを振り向く。
するとハリセンが見事に的中した謎の人物がそこには居た。

「ん?」

不思議そうにそう見つめると叩かれた人物は急に動き出した。

「ん?じゃね!いきなり人の宮に入ってきてハリセンで叩くってどういう根性してんだ!
・・・テメェ!ふざけるなよ!・・・って、よくみりゃ女じゃねーか」
「あれ?人?」

不思議そうに呟くと目の前の人物が怒りを露にして怒鳴りつけてきた。

「当たり前だろうが!」

そうは言うけど頭の聖衣が蟹です。<
聖衣?蟹?
一体誰なんだろうという疑問の前に蟹が気になってしまって気付かなかったがこの人もしかしたらというかどう見ても。

「蟹さん!!」
「誰が蟹だ!!」
「だってカノンとムウが!!」

素直に述べるにデスマスクは拳を握り締めながらふるふると震える。
もちろん怒りによるものだ。

「(あいつら後で覚えてやがれ・・・!)俺はデスマスクだ。断じて蟹じゃねぇ!蟹座の黄金聖闘士だが蟹じゃねぇ!」

でも、頭は蟹です。
必死に否定していらっしゃるけれどどう見ても蟹にしか見えない。
が、その気持ちは取り合えず置いておいて私はようやく落ち着き自己紹介をする。

「じゃあ、とりあえず初めまして、射手座の新しい黄金聖闘士になった。です」

その自己紹介に半ばついていけてないデスマスクであったが何となく天然ボケだと理解したらしい。
で、改めて目の前のを観察する。

「ふーん・・・ねぇ?なかなかいい体してんじゃねーか」

そういうとデスマスクはの腰に腕を回し、顎に手をかけた。

「はぁ?あ、の?」
「せっかくだし俺様が先輩として色々と教えて・・・」

デスマスクが最後まで言葉を紡ぐ事はなかった。

「デスマスク!に何してやがる!」

そういっていきなりデスマスクにとび蹴りを食らわせたカノン。
駆けてきたそのままのスピードが掛かり威力は軽く三割り増しである。

「あじゃぱー!!!」

本当に言った!!あじゃぱー!!って!!
生あじゃぱーにちょっと感動を覚えている
そこにムウがの目の前に姿を現した。
かと思いきや凄まじく心配した様子での肩を掴み力の限り揺さぶる。

「大丈夫ですか!?!!蟹があの色欲蟹がなんかしませんでしたか!?」
「う、うん。大丈夫だよ。ちょっと腰に手を回されたり、顎をつかまれたりしたけど」

がそういうとムウは静かにデスマスクの方を見据えて、立ち上がり近づいていった。

「デスマスク・・・貴方という人は・・・!!」
「ま、まって!!まだ何もしてねー!!」
「「まだ?」」
「しまった・・・」

デスマスクは口元を押さえながらそう言った。
カノンとムウはデスマスクに詰め寄りどこか危ない笑みを浮かべる。(目は殺意でぎらついている。)

「覚悟はできているだろうな?」
「もちろん、できてますよね?」
「ま、まて!!」

デスマスクは必死に弁解しようとしたが二人は聞かず、は流石にやばいと感じ、三人の間に割って入った。

「ストーーーーップ!!流石に駄目だって!!っていうか私まで巻き込まれるし!!」

たぶん大丈夫だろうけど。
何となく瓦礫とかはどうにも出来そうにないし。
カノンとムウはしばし渋ったが報復はアテナに報告してからでも遅くないだろうと思い、留まった。

「・・・わかりました。それにあまり時間をかけるわけにもいきませんしね」
「そうだな。どうせ蟹はの事を認めているんだろう?」

そういわれて復活した蟹もといデスマスクは頷く。
もはや自分が蟹だと言われようが何も言い返してこない。(半分諦めが入ったらしい。)

「まあな。さっきから感じてた小宇宙からいってもいいんじゃねーか?」
「それじゃあ認めてもらった事ですし、こんなところさっさと抜け出しましょう」

ムウはデスマスクがそういうと同時にの肩を抱き、出口に誘った。
それも超高速で。

「おい!!ムウ!!何の肩に手をかけているんだ!!」
「てめーこそ厭らしい事してんじゃねーか!!」

さすがのデスマスクもこれには反論。

「貴方たちがやると顔が厭らしいからそう見えますけど私は違うのでいいのですよ」
「なんだよ!!その理由!!」

まあ、そんなこんなで色々あったけど巨蟹宮も突破!!
次は獅子宮!

「あ、あのデスマスクさん」
「あん?さんづけはやめろ。気持ち悪い」
「あ、うん。えっとこれからよろしくね?デスマスク!!」

デスマスクはの笑顔に思わず押し黙ってしまった。

「(クソ!俺がなんでこんなガキに!!)ま、よろしくしてやるぜ」

そういってに近づき、の頬にキスをした。

「ふぇ?」
「貴様!!デスマスク!!!」
「やはり生かしておけませんね!!」

あの二人とも・・・
はやく次の宮にいかないと・・・
日が暮れるよ・・・