「というかノブ達、お酒弱すぎ。」
「いや、が強いだけだと思うけど・・・」
突如、麻雀大会がお酒の飲み比べになったんだけど殆どが撃沈。
残ったのが私とシンちゃんとヤスだけだ。
「シンちゃんも強いね。」
「そうかな?普通だと思うけど。」
未成年二人に飲み比べで負ける面々は心中複雑そうな顔をした。
一人大人なヤスは苦笑しているが・・・
Act4:The world that began to color
「で、皆大丈夫?」
皆、やや頭を抱えたりしている。
そんな皆に私は水を手渡す。
「うー・・・は絶対弱いと思ったんだけどなぁ・・・」
「あはは。だからナナ飲み比べなんて言い出したんだ。」
「だって普通考えてこの中でハチとが弱いと思うって・・・」
ナナは顔をゆっくりと上げて水を受け取った。
ちなみにハチはヤスが部屋に運んで上げた。
なんせ一番最初に酔いつぶれて寝てしまったから。
「はい、ノブ。」
「サンキュ・・・」
コップを受け取るとゆっくりと水を飲みだしたノブ。
本当に犬っぽいなぁ・・・
「レンとタクミもどうぞ。」
「悪いね・・・」
「悪い・・・」
二人は何とか顔を上げ、笑顔でコップを受け取る。
こういう時でも笑顔を浮かべられるのはプロの成せる技なのだろうか?
「二人とも仕事とかで大丈夫・・・?」
「その辺はもう気合かな?」
予想外のタクミの言葉に私は笑いを漏らす。
でも、本当に気合で何とかしてしまいそうだと思うのは彼らの音楽に対する情熱を話を交わす内に感じ取ったからかもしれない。
「気合って・・・クスクス。」
私は皆が飲み終えたコップを台所に置いた。
そして、振り返ると面々を見て私は訊ねた。
「で、どうする?これから・・・」
「そうだね・・・この状態じゃもうお開きってことになるね。」
ヤスが苦笑してそう言うと一人残念そうな声を上げるシン。
「えーもっと遊ぼうよー!ね?ー」
「んー・・・でも、今回は仕方ないよ。もしよかったら私の部屋に来る?」
何もないけれど・・・と付け足そうとする前にシンが抱きついてきた。
「行く!行く行く!!」
「何にもないよ?」
「ぜんぜんいいよ♪の部屋見たいしー・・・イダッ!!」
乗り気だったシンの頭を誰かがゴツッ!!と殴った。
ゆっくりと振り返るとそこには頭を抑えながら立つノブが居た。
「痛いなぁ!!ノブさん。」
「痛いなじゃないだろ!の家に上がるなんて!」
「あれぇ〜ノブさんヤキモチ?」
面白そうに茶化すシンに慌てて否定するノブを見て私は笑った。
するとヤスが後ろに立ち、私にそっと告げる。
「あの調子だし、隣だけど家まで送るよ。」
「でも、皆は・・・」
心配して周りを見て私がそういうとヤスは「ちゃんと連れて帰るから大丈夫。」と言った。
「それじゃあ・・・お言葉に甘えようかな・・」
「じゃあ、行こうか。」
「あーズルイよーヤッさんー」
シンちゃんは頬を膨らませてそう言った。
「また今度遊びにおいで。ノブもよかったら。」
「え?本当!?」
「うん。それじゃあね。皆お大事に・・・」
ノブは先程騒いだせいで手だけを上げて反応を返す。
タクミとレンはやっぱりまた笑顔を浮べてちゃんと返してくれた。
女性陣は眠ってしまっているらしく、反応はない。
私はその様子に本当に大丈夫だろうかと思いつつ、ヤスと共に部屋を後にした。
そして、自分の部屋の扉の鍵を開けると振り返りヤスを見た。
「それじゃあ、またね。ヤス。」
「ああ、おやすみ。」
「うん。お休みなさい。」
その夜はそう言って別れた。
私は鍵をテーブルの上に置き、窓を開けた。
外から入ってくる風が心地よかった。
そして、今日出会った人たちを想った。
今日、会ったばかりなのにどうも変な気持ちになる。
温かな温もり。
そんなもの求めはしないと思っていたけれど。
やっぱり人は一人では生きていけないのかな?
取り留めのない問いに答えは返ってくることはなかった。
私は窓を閉め、ベッドに向かった。
その少しの間に思ったこと。
これからもっと彼等と楽しい時間を過ごせるだろうか?
そんな淡い期待。
色づき始めた世界はとても綺麗だったよ。
もっともっと違う色が見たくなったそんな夜。
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