「ん〜!おいしいっ!、よくこんなお店知ったねっ!」

満面の笑みを浮かべてケーキを食べる姿に私はふふっと笑いを浮かべながら紅茶を飲んだ。
口の中で広がる薫りが美味しさを一層引き立たせている。

「私もたまたま見つけた所なの。静かでケーキも紅茶も美味しい。中々の穴場でしょ?」
「だねっ!あ、もう一つケーキ頼んでいい?」
「いいよ。でも、よく食べるね。」
「だって、おいしいんだもん!すみませーん!」






Act6:Tea time under blue sky&Each circumstances.







「ごちそうさまでしたっ!」

ケーキを二つ完食したシンちゃんは手を合わせてそう言った。

「どう?満足した?」
「うん!うん!ありがとうっ!。」
「どう致しまして。」

互いににっこり笑い合いながらそう言う
するとその時誰かの携帯の着信音が響き渡る。

「あ、ボクだ。ちょっと待ててね。。」
「うん?いいよ。」

ピッという電子音と共に電話に出るシンちゃんを私は紅茶を飲みながら見た。

「もしもし?あ、雪乃さん?うん・・・うん・・・今晩だね?いいよ。
・・・うん・・・ボクも楽しみにしてるねっ♪それじゃあ、バイバイ〜」

私は会話の内容に何やら違和感を感じたので通話を終えたシンちゃんに問いかける。

「今の誰?家族とかそういう感じじゃなかったけど・・・恋人?」

素直に疑問をぶつけてみると先ほどと変わらない表情で信じられないことを口にした。

「お客さんだよ。」
「・・・え?」

客?
私は思わず目を見開いた。
何か得たいの知れない寒気が背筋を襲う。

「そっか。は知らないんだよねーなんていうか一晩相手をしてお金貰ってるの。」

その言葉に私は完全にフリーズした。
こんなに無邪気で汚れを知らぬような子が?という驚き。
そして、何より何故そんな事をしなければいけないかと言う事だ。

「・・・なんでそんな事してるの?」
「家族いないし。これが一番手っ取り早いでしょ?未成年でお金を稼ぐ方法として・・・」

私はその口から紡がれた言葉を遮るように叫んだ。
どうしても耐え切れなかった。
自分の身体を省みないそのやり方に。

「そんなことやめなさいっ!!!」

かなり大きな声を上げたが人通りも少ないカフェテラスだった為、大して見られる事もなかった。
大声をあげられたシンちゃんは一瞬固まったがすぐに嫌悪のような表情を浮かべた。

「何?ボクにお説教ならやめてよね。第一、個人の自由でしょ?」
「そういう事じゃないでしょ?それは貴方の身を自分で傷つけているじゃない。」
「ボクが自分自身を傷つけてる?別に傷ついてなんかない。
それに、にそういう事をいう権利があるの?何も知らないくせに!!」

その言葉に私は何も言えなくなり言葉を濁した。

「・・・もういい?ボク、もう行くから。ケーキおいしかったよ。じゃあね。」

それだけを言い残すとシンちゃんは席を立ち私が気付いた時には姿が見えなくなっていた。

「本当に・・・私、何やってるんだろう・・・」

勘違いもいいところだ。
この数日で皆に近づけた気でいた。
たった、数日で人との距離が埋まるわけもないのに。
私に誰かを説教する権利などないというのに。
思い上がってた自分を呪った。
そして、無力な自分を呪った。
溜息を吐き立ち上がると私は会計を済まして家路へと向かった。
そんな時、ふいに背後から声をかけられた。

お嬢様?」

忌々しい呼び方に私は思わず体を強張らせながら振り返った。
そこにはかつて私が実家に居たときのメイドが居た。

「貴方は・・・」

こんな時に会うなんて運が悪いにも程がある。

「お久しぶりでございます。日本に戻ってきているとは聞いていましたがまさかこのような場所に居ようとは・・・」
「え、ええ・・・」

正直、私の家の事情を知る者になど会いたくなかった。
そして、無神経に人の過去を話し出そうとする人間は最も会いたくなかった。

「やはりお屋敷のほうには御戻りになっていらっしゃらないのですね・・・
あのような忌まわしいことがあったのに戻れませんよね。あのお屋敷では弟君が・・・」

「やめて!」と叫びそうになった時、急に背後から声が聞こえた。

「あれ?ちゃん?」

そこに立っていたのは一ノ瀬巧、本城蓮、高木泰士の三人だった。
ちなみに声をかけたのはタクミである。

「皆さん・・・」
「あら?お嬢様、待ち合わせだったんですか?それじゃあ、私は失礼しますね。
それと・・・お屋敷には一度お戻りくださいませね?ご主人様たちもお待ちしている筈ですし。」
「え、ええ・・・そのうち・・・」

「では・・・・」と言い残しメイドは去っていった。
さっさと去ってくれたメイドを見て安堵するとタクミ達へと駆け寄った。

「ごめん。話し中だった?」

申し訳なさそうにヤスがそう言った。

「いえ、むしろ助かりました。」

私は苦笑しながらそう言うと三人は不思議そうな顔をした。

「ところで皆さん、何をしてるんですか?こんなところで・・・」
「いや、たまたま会って今から飲みに行こうかって話しになってな。仕事もオフだし。」
「そうだ。折角だし、ちゃんもどう?」

タクミの誘いに私はどうしようかと思ったがヤスにシンちゃんの事を聞きたかった事もあり、その誘いを受ける事にした。
まあ、なんというか異様な組み合わせの中。
再び夜は更けていった。